2008 Fiscal Year Annual Research Report
同時・継次処理過程における神経学的基盤の検討-ニューラルネットモデルを用いて-
Project/Area Number |
08J00839
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
奥畑 志帆 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 同時処理 / 継次処理 / 脳波コヒーレンス / 情報処理能力 / 知能 / 認知機能 |
Research Abstract |
本研究は情報処理能力のアンバランスの背景となる生理心理学的基盤を検討し、発達障害児者の情報処理の特徴をモデル化することを目的とした。本年度はこの目的に沿い(1)健常者における異なる二つの情報処理能力の生理心理学的基盤及び(2)発達障害児者の情報処理能力の生理心理学的検討を行った。(1)では脳波コヒーレンスを指標として用い、二つの処理様式が生理心理学的に異なる基盤を背景としている可能性を指摘した。さらにこれらの処理様式課題遂行中のコヒーレンス値に左右差が示されなかったことから処理様式と刺激の言語性、間隔モダリティは相互に関連しながらも異なる要因である可能性を指摘した。(2)では個人により異なる認知スタイルがコヒーレンスに反映される可能性が支持された。知能を処理様式としてみる観点はこれまでの多くの知能研究から導き出され一定の妥当性が支持されてきている。その中で、同時-継次処理を仮定するモデルは臨床的観察から構成され,因子分析的研究においてその妥当性が確認されてきていたが、その生理心理学的基盤に関しては一貫した知見が得られてきていなかった。本年度の成果は二つの処理様式に生理心理学的な根拠を提示し,コヒーレンス分析が健常者の脳過程だけでなく、発達障害児者においても処理様式の要因に対し一定の弁別力を持つことを示したことである。本研究の結果は異なる認知処理スタイルを保ちながら,社会生活及び学習においてある程度同等の遂行が可能であり、認知処理能力のアンバランスを個人に特異的な方略や処理のスタイルにより補完できる可能性について生理心理学的データを提示して示唆した点で意義深い。また処理様式と刺激の言語牲や感覚モダリティの要因とは全く同一の概念ではないことが示唆し、認知能力におけるアンバランスのある個人に対する指導や援助を考えるにあたってはこのような可能性を把握しておくことが重要であることを提案した。
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Research Products
(2 results)