2008 Fiscal Year Annual Research Report
核磁気共鳴法を用いた層状超伝導体の超伝導対称性の同定およびその発現機構の解明
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08J00851
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中井 祐介 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 鉄砒素系高温超伝導 / 核磁気共鳴 |
Research Abstract |
2008年2月に東工大の細野教授のグループから報告のあった鉄砒素系高温超伝導体LaFeAs(01-xFx)の物性を、発見当初から細野教授のグループと共同研究を行い核磁気共鳴法(NMR)を用いて調べた。その結果、母物質LaFeAsOは155Kに構造相転移を示した後、142Kで反強磁性秩序を起こすこと、またその磁気秩序はフッ素(F)を4%ドープすることで急激に抑制され、16Kに超伝導が現れることをNMR実験から示し、この物質のFドープに対する相図を作成した。さらにFドープによる常伝導状態の磁気励起の変化を調べ、低エネルギー反強磁性ゆらぎと超伝導の関係を議論した。また超伝導状態の核スピン格子緩和率1/T1を測定し、超伝導転移温度直下にコヒーレンスピークが見られないこと、低温で1/T1が冪的な温度依存性をすること示し、この超伝導が従来の金属超伝導に見られるs波超伝導状態とは異なることを示した。 さらにAsをPに置換したLaFePO系においてもNMR実験を行った。この系はLaFeAsO系(最高超伝導転移温度Tc=26K)と同じ結晶構造をもちながら、Tcが三分の一程度(8K)しか示さないため、LaFeAsO系の高温超伝導の起源を理解するために重要な物質である。顕著な反強磁性ゆらぎが観測されたLaFeAsO系とは対照的に、常伝導状態では二次元的な弱い強磁性ゆらぎが見られた。超伝導状態では、超伝導ギャップの影響は見られず、Tc近傍から低エネルギースピンゆらぎが発達するという非常に特異な振る舞いを示すことを明らかにした。上記のように鉄砒素系超伝導を理解する上で重要となる基礎的な実験を行い、現在数多く参照される結果を報告した。
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Research Products
(9 results)