2008 Fiscal Year Annual Research Report
耐食合金へのマイクロインデンテーション法による再不動態化挙動に関する研究
Project/Area Number |
08J00855
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 隆登志 Hokkaido University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | マイクロインデンテーション / 312Lステンレス鋼 / モリブデン / 金属組織 / 面方位 / 転位 |
Research Abstract |
2008年度の研究成果を以下に示す。 (1)スーパーステンレス鋼(SUS312L鋼)の高耐食生発言機構の解析 近年,高寿命材料としてスーパーステンレス鋼が用いられているが,その高耐食性発言機構の解明は材料を安全に使用するために重要である。解明方法として,不働態皮膜の機械的破壊とその修復を観察できるマイクロインデンテーション法および皮膜の深さ方向組成分析をできるグロー放電発光分光法(GDOES)を導入した。NaC1水溶液環境下,インデンテーション法により不働態皮膜の破壊面積は下地金属の変形面積に依存し,一般的なステンレス鋼(SUS304,316L鋼)よりもSUS312L鋼の皮膜破壊面積が小さくなることを見出した。一方,GDOESによりSUS312L鋼上に形成する不働態皮膜の外層にモリブデンが濃縮していることがわかった。このことから,耐食性発言機構をカチオン選択性であるモリブデン化合物が塩化物イオンの侵入を防ぐためと説明した。 (2)不働態皮膜の破壊と修復における金属組織の影響 金属材料は機械加工あるいは熱処理後に使用される。この処理によって変化した金属組織およびその上に形成される不働態皮膜が耐食性に影響を与える。しかしながら,これらの影響の主な要因は偏析,相変態および結晶粒径によるものとされており,転位およびひずみの効果についてはほとんど報告がない。その効果を検討方法に電子後方散乱回折法(EBSD),インデンテーション法および電気化学インピーダンス法(EIS)を導入し,試料には冷間圧延した多結晶純鉄を用いた。皮膜の修復電気量に面方位依存性がないことを見出した。これは,機械的な皮膜破壊の場合,破壊された部位の面方位が破壊前の面方位に依存しないためと説明した。冷間圧延によって導入された転位が皮膜修復電気量を増加させることを見出した。また,転位を多く含む試料上に形成する皮膜は欠陥の少ない試料上のものよりも欠陥密度が高くなることがわかった。
|
Research Products
(6 results)