2009 Fiscal Year Annual Research Report
自然免疫活性化機構の解明と制御を目指したグラム陰性菌細胞表層成分の合成研究
Project/Area Number |
08J00870
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下山 敦史 Osaka University, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | リポ多糖 / 自然免疫 / ヘリコバクター・ピロリ / ポルフィノモナス・ジンジバリス / 寄生性細菌 / グリコシル化反応 |
Research Abstract |
自然免疫の代表的な活性化因子の一つとして知られる細菌細胞表層成分リポ多糖であるが、寄生性細菌であるピロリ菌、ジンジバリス菌由来のリポ多糖はその弱い免疫刺激活性と感染性や病原性、すなわち慢性炎症やアテローム性動脈硬化との関連が示されており、多くの興味が集まっている。しかし、リポ多糖の活性中心であるリピドAは菌株や培養環境により構造が部分的に変化し、リン酸基、アシル基パターンの異なる数種の構造が存在するため、詳細な活性の解析には各々純粋な化合物が必要であるが、網羅的な合成例は未だ無く、構造と活性に関する十分な情報が得られていなかった。平成20年度までに(1)多様なパターン構造のリピドA類へと展開可能な合成戦略の確立、(2)ピロリ菌、ジンジバリス菌型リピドAの合成、および(3)Kdo残基の効率的α-選択的グリコシル化条件の最適化を達成し、本年度はこれらの知見の集積により、Kdoを含むピロリ菌型リポ多糖部分構造の合成を達成するとともに、これまでに網羅的に合成した寄生性細菌由来リポ多糖部分構造を用い、包括的な生物活性試験を行った。その結果、ピロリ菌型においてはリン酸基構造、ジンジバリス菌型はアシル基構造の差異に由来し、免疫刺激、阻害活性がスイッチングすることが見い出され、それらに由来する免疫調節作用により寄生性細菌が宿主との寄生関係を確立させている可能性が示された。また、寄生性細菌由来リピドAの一部は複数存在するシグナル経路を選択的に阻害、活性化していることが明らかとなり、このシグナル伝達経路の選択的活性化が寄生性細菌に起因する慢性炎症性疾患に関与している事が示唆された。
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Research Products
(7 results)