2008 Fiscal Year Annual Research Report
自然免疫活性化機構の解明と制御を目指したグラム陰性菌細胞表層成分の合成研究
Project/Area Number |
08J00870
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下山 敦史 Osaka University, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | リポ多糖 / 自然免疫 / ヘリコバクター・ピロリ / グリコシル化反応 |
Research Abstract |
ピロリ菌やジンジバリス菌の細胞表層成分リポ多糖は、宿主の免疫機構制御を行っている可能性が示唆されている他、その弱い免疫刺激活性と感染性や病原性、すなわち慢性炎症やアテローム性動脈硬化との関連も示されており、多くの興味が集まっている。しかし、リポ多糖の活性中心であるリピドAは菌株や培養環境により構造が部分的に変化し、リン酸基、アシル基パターンの異なる数種の構造が存在するため、詳細な活性の解析には各々純粋な化合物が必要であるが、網羅的な合成例は未だ無く、構造と活性に関する十分な情報が得られていない。 本研究では、受容体機能を明らかにするとともにそれを制御するための構造要因の解明を目指し、多様なパターン構造のリピドA類へと展開可能な合成戦略を確立し、得られた合成化合物の生物活性試験を行った。具体的には新規共通鍵中間体を用いた2種のピロリ菌型リピドAの合成を達成するとともに、2糖鍵中間体へのKdo残基の効率的α-選択的グリコシル化条件を確立した。さらに、化学合成により得たリン酸基の構造の異なる2種類のピロリ菌型リピドA(一方は通常の1位リン酸体、もう一方は1位リン酸にエタノールアミンの縮合したもの)を用いた生物活性試験を行った結果、炎症性サイトカインIL-6については1位エタノールアミンリン酸体が誘導活性を示すのに対し、1位リン酸体は阻害活性を示し、リン酸基構造の違いによる活性のスイッチングが見られた。また、IL-6とは異なる機構により誘導されると考えられているIL-18について試験を行った結果、IL-6誘導活性を示した1位エタノールアミンリン酸体だけではなく、IL-6については阻害活性を示した1位リン酸体も誘導活性を示した。このことからピロリ菌型リピドAは異なる複数のシグナル経路を選択的に阻害、活性化していることが示唆され、シグナル経路を選択的に活性化可能な分子を明らかにした。
|
Research Products
(6 results)