2008 Fiscal Year Annual Research Report
バルザック『セラフィタ』における聖書とスウェーデンボルグ
Project/Area Number |
08J00899
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大須賀 沙織 Waseda University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | バルザック / セラフィタ / スウェーデンボルグ / 聖書 / キリスト教 / 神秘思想 / フランス文学 |
Research Abstract |
本年度は、フランス19世紀の小説家バルザック(1799-1850)の宗教的作品『セラフィタ』理解の基礎作りとして、バルザックが使用した聖書、バルザックが読んだスウェーデンボルグ著作の特定化作業に専念した。使用聖書の特定化にあたっては、1819年の書簡から、バルザックがラテン語・フランス語対訳聖書を読んでいたことがうかがえ、この時期のフランスにおける聖書の出版状況を調査し、オラトリオ会神父ルイ・ド・キャリエールによる注釈付き羅仏聖書(1819年、全10巻)、複数の神学者の注釈を総合した『ヴァンス聖書』と呼ばれる羅仏聖書の第4版(1820-1824年、全25巻)をはじめ、この時期に出版された各種聖書の大部分が、ウルガタ版ラテン語聖書とサシー版仏訳聖書を土台にしていることを確認し、ゆえにウルガタ版とサシー版を今後の比較研究の基礎テクストとして使用する妥当性を導くことができた。また、バルザックの作品には聖書の言葉のほか、ミサと祈りの言葉も多く見られ、当時の一般的なミサ書を調査、1820年版羅仏対訳『ローマ・ミサ典礼書』を入手した。スウェーデンボルグ著作に関しては、1832年の装丁記録から、バルザックがスウェーデンボルグの著作を8冊所有していたことが明らかにされており、この記録と、当時のフランスにおけるスウェーデンボルグ著作の出版状況から、1819年から1824年に出版されたジャン=ピエール・モエによる仏訳11点のうち大部分であると推定、このうちとくにどの著作であったか、バルザックの引用や参照をモエの翻訳と比較し、特定化を試みた。その結果、バルザックは少なくとも、『真のキリスト教』(2巻)、『新エルサレムと天界の教義』(1巻)、『天界と地獄』(1巻)、『神の愛と神の知恵に関する天使の知恵』(1巻)、『啓示された黙示録』(2巻)を参照していることが確認できた。
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Research Products
(2 results)