2009 Fiscal Year Annual Research Report
バルザック『セラフィタ』における聖書とスウェーデンボルグ
Project/Area Number |
08J00899
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大須賀 沙織 Waseda University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | バルザック / 聖書 / 神秘思想 / セラフィタ / スウェーデンボルグ / キリスト教 / フランス文学 |
Research Abstract |
1.『セラフィタ』には、スウェーデンボルグをはじめ、複数の神秘思想家の影響が見られる。1832年付けの装丁記録には、バルザックがスウェーデンボルグの著作8冊のほか、ヤコブ・ベーメ1冊、アントワネット・ブリニョン15冊、ギュイヨン夫人18冊、サン=マルタン11冊を所有していたことが記されている。また、『キリストにならいて』、アヴィラの聖テレサ、フェヌロン、エッカルツハウゼンは、バルザックの作品やこれまでの研究から読んでいたことが確実と見られる。バルザックの言及と当時の出版状況をもとに、バルザックの所有していた作品、読んだ作品の特定化作業を行った。2.スウェーデンボルグの著作については、1819年から1824年に出版されたジャン=ピエール・モエによる仏訳『真のキリスト教』、『新エルサレムと天界の教義』、『天界と地獄』、『神の愛と神の知恵に関する天使の知恵』、『啓示された黙示録』と『セラフィタ』とのテクスト比較を行い、バルザックが実際にこれらの仏訳を参照していたことを論証するとともに、バルザックがどのように独自の解釈を施したかを考察し、論文"Balzac and Swedenborg"(in Swedenborg : an Anthology of Essays, London, The Swedenborg Society, 2010年7月刊行予定)にまとめた。3.『セラフィタ』には聖書テクストが数多く引用、暗示されており、バルザックが聖書のどのような箇所を抽出し、どのように自らの神秘思想を展開しているかを分析した。そこから浮かび上がったのは、バルザックが聖書に記された奇跡の場面を数多く取り出し、懐疑的時代への抵抗を試みていること、福音書の教えを登場人物の言葉に浸透させ、内的完成の道を示していること、聖書には字義的意義のほかに象徴的意義が含まれており、人間が霊的能力を発展させることでこうした内的意義の理解に到達するよう促しているという側面であった。この内容を日本フランス語フランス文学会関東支部大会にて発表した。
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Research Products
(2 results)