2010 Fiscal Year Annual Research Report
両親媒性フラーレンからなる二重膜ベシクルの表面化学修飾による物性制御
Project/Area Number |
08J00932
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本間 達也 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | フラーレン / ベシクル / フルオラス / 両親媒性分子 |
Research Abstract |
私は,採用第3年度において,水溶性フラーレンからなる二重膜ベシクルの表面修飾について研究を行ってきた.高度に疎水化された種々のフラーレン分子は自己組織化し二重膜ベシクルを形成することを見出し、米国化学会誌に報告した。これらベシクルは,従来の二重膜ベシクルとは大きく異なり,その構成要素である両親媒性分子は、疎水-親水-疎水の構造を有するため、この両親媒性分子からなるベシクルは、きわめて疎水的な表面を有しておりながらも水に溶解するという特異な性質を有している.このベシクルは水中で,表面が高度に疎水的なアルキル鎖で覆われていることから,疎水性環境を呈示しているものと考えられる.そこで,種々の疎水分子をこのベシクル溶液と混合することで,これらのきわめて水溶性の低い分子が高濃度で水に溶解することが明らかとなった.さらに興味深いことに,このフラーレンベシクルは基板上に塗布可能であるほどの高い安定性を示すことが明らかとなった.フラーレンベシクル水溶液を基板上にスピンコーティングすることで,単層の均一膜を形成可能であった.原子間力顕微鏡による測定では基板上に密に詰まっているように観測されたが,高分解能走査型電子顕微鏡による測定によって,それぞれのベシクルが互いにくっつき合うことなく単分散していることが明らかとなった,これはベシクル上の疎水表面に由来するものと考えられる.さらにこの基板に対する水の接触角を測定したところ,高い撥水性を示すことが明らかとなり,新たな表面加工の手段としてのフラーレンベシクルの応用への道が拓かれた.また、これらのベシクル二重膜に対する水分子の透過性を、170 NMR法を用いて測定したところ、既存の分子二重膜の中でもっとも水を透過させにくい二分子膜であることが明らかとなった。この水の透過の過程を熱力学的に解析すると、この過程はエントロピーが障壁となっていることがわかり、エンタルピー項が支配的要因となる既存の分子二重膜への水透過とはまったく異なる機構であることが明らかとなった。以上の知見により、新規両親媒性分子である五重付加型フラーレンからなる二重膜ベシクルは、新規膜材料としての応用が期待される。
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Research Products
(1 results)