2009 Fiscal Year Annual Research Report
走査トンネル顕微鏡による単一分子の振動分光および電気伝導特性の評価
Project/Area Number |
08J00951
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
熊谷 崇 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / 単一分子 / 振動分光 / 電気伝導 |
Research Abstract |
低温用走査トンネル顕微鏡(LT-STM)を応用することで金属表面に吸着した分子を単一分子レベルで制御・観測し、いくつかの興味深い現象を見出した。平成21年度中の研究成果は1本の原著論文にまとめられている。本年度の研究成果として最も突出した点は、金属表面上で水分子の単分子操作を実現し、それにより任意の水素結合系を表面上に構築することを可能にした点にある。この技術を用いてまず水分子-水酸基のZundel型と類似した複合体(H2O-OH)を作成し、この複合体の水素結合において2つの酸素原子に共有された水素原子が対称位置に存在する強い水素結合系(Low-Barrier Hydrogen Bond)を形成していることを見出した。また、単一分子に対する振動分光手法を用いることによってH2OとD2Oの複合体の識別にも成功している。さらに水酸基を一列に並べた後に水分子と反応させることにより、水素結合の"wire"(H2O-OH-OH-OH)を表面上に構築した。この系を用いて、水素原子がwireに沿って移動するプロトンリレー(H2O-OH-OH-OH⇔OH-OH-OH-H2O)を初めて実空間において観測した。これらの研究成果は金属表面上の水素結合系の研究・応用に新たな知見をもたらすものであると考えられる。本研究で確立された「単分子組み立て法」は任意の組成、構造をもつ分子システムを構築できるという点で学術的に画期的な研究成果であり、今後の発展が大いに期待できる。また、本研究の一つの重要なテーマであるSTMを用いた単一分子の電気伝導に関する研究についてはベンゼン単分子架橋構造の非破壊的な形成・破断方法を確立し、ベンゼンナノコンタクトにおける電流電圧特性の測定を行うなどの進展がみられた。
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