2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J00991
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 光憲 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 環拡張ポルフィリン / ヘキサフィリン / カリックスジピリン / 縮環反応 / メビウス芳香族性 / 磁気的相互作用 |
Research Abstract |
カリックス[3]ジピリンは3つのジピリンユニットが水酸基を有するsp3炭素によって架橋された柔軟な環構造を持つという特異な構造を有し、その高次類縁体として考えられるカリックスオリゴピリンはこれまでに報告されてきた環拡張ポルフィリンとは異なる独自の化学の発展が期待出来る。その選択的かつ効率的な合成法の開発のため、前駆体としてトリピランを用いチエニル基を有するカリックスオリゴピリン合成を試みたところ、通常のヘキサフィリンの生成とそれに続くチエニル基の縮環反応により、非常に興味深い電子系であるメビウス芳香族性を有する化合物が得られた。メビウス芳香族性はその合成の困難さから報告例が少なく、また金属錯体やプロトン化体などの特殊な条件でしか明確な芳香族性を示すものがない。報告者らによって合成されたメビウス芳香族分子は中性・フリーベース・室温で明確なメビウス芳香族性を示す初めての例であり、これからのメビウス芳香族分子の研究において重要なモデル分子となりうる。報告者は第19回基礎有機化学討論会においてこの業績が高く評価されポスター賞を受賞している。 報告者が見出した、チエニル基の縮環反応によりヘキサフィリン全体の熱運動を制御するという手法は柔軟な骨格を有する大環状化合物の構造制御に非常に有用である。一方で環外周部の置換基の違いにより生成物が異なり、その全体の電子系が大きな影響を受けるという事実は非常に興味深く、種々の置換基に対して詳細な検討を加えることでカリックスオリゴピリンと通常の環拡張ポルフィリンの化学の橋渡しが可能であると考えられる。
|