2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J00991
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 光憲 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 環拡張ポルフィリン / ヘキサフィリン / 縮環反応 / メビウス芳香族性 / パラジウム錯体 / スイッチング |
Research Abstract |
前年度に、前駆体としてトリピランを用いチエニル基を有するカリックスオリゴピリン合成を通じて通常のヘキサフィリンの生成とそれに続くチエニル基の縮環反応によりメビウス芳香族化合物が得られることを発見した。今年度はこの分子に関して更に調査を進め、得られた分子が置換基のフリップによりメビウス芳香族性の異性体とヒュッケル反芳香族性の異性体の平衡混合物であることを明らかにした。この知見からメビウス芳香族性の発現に適切なように置換基を最適化し、単一異性体としてメビウス芳香族分子を得ることに成功した。この分子に関して単結晶X線結晶構造解析により構造を明らかにし、各種分光学的測定・計算化学を駆使することでその物性を明らかにした。その結果、この分子は今まで報告されたメビウス芳香族性を示す分子と比較して強い芳香族性を示し、室温・中性・フリーベースという通常の条件下で明確な芳香族性を示す。この成果は高く評価され、一流国際化学誌であるAngewandte.Chemie.International.Editionに掲載され大きなインパクトを与えた。 また、ヘキサフィリンの10族金属錯体がメビウス芳香族性を示すことは既に報告しているが、その中でも研にパラジウム錯体において適当な酸化剤を作用させることにより新たな金属炭素結合の生成を伴い平面のヒュッケル芳香族性を示すヘキサフィリンPd錯体の合成に成功した。またこのヘキサフィリンPd錯体の酸化体に対し適当な還元剤を作用させることで、酸化において生成した金属炭素結合の開裂を伴って原料のメビウス芳香族性ヘキサフィリンPd錯体に変換出来ることを見出した。このように配位子の電子状態に伴ってパラジウムイオンが配位環境を変えるというのは非常に珍しく、環拡張ポルフィリン研有の反応であると言える。またこの酸化体は金属イオンの配位に適切な空孔を有しており、これは金属異核錯体の合成に用いることができ非常に興味深い。
|