2008 Fiscal Year Annual Research Report
NMRによる、頂点フッ素系多層型高温超伝導体におけるセルフドープ状態の研究
Project/Area Number |
08J00992
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
清水 直 Osaka University, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導 / NMR / 多層型 / 反強磁性 |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体の電子相図はまだ明らかにされていない。CuO_2面が超伝導の舞台であり、特に超伝導キャリアー(ホール)の少ない領域(低ドープ領域)の重要性が認識され理論・実験による様々な研究が行われてきた。しかしながら超伝導発現機構の解明には至っていない。 銅酸化物高温超伝導体の中でも、多層型と呼ばれる一連の物質は単位胞内に複数のCuO_2面を持ち、CuO_2面の優れた平坦性のために理想的な研究対象である。本研究ではこの多層型物質の一つである頂点フッ素系Ba_2Ca_<n-1>Cu_nO_<2n>(F_yO_<1-y>)_2に注目した(n;CuO_2面の積層数)。この系では酸素イオン(O^<-2>)とフッ素イオン(F^<-1>)の価数の違いを利用しホール濃度(N_h)をコントロールすることができる。フッ素量y及びCuO_2面数nの異なる試料のNMR測定を行い、低ドープ領域の系統的な研究を行った。 Cu-およびF-NMR測定により明確なn依存性を示す結果が得られた。n=4の場合、N_h〜0.15より低ドープ領域においてAFM秩序が観測された。これはN_h〜0.15がn=4の場合の反強磁性磁気臨界点(QCP)であること、またAFMとSCの共存相が存在することを示唆する。一方n=2の場合にはQCPはN_h〓0.14の領域に存在すること、n=5の場合にはQCPはN_h〜0.17であることが観測され、nの増加にともないQCPに対応するN_hが増加することがわかった。 本研究により観測されたAFMとSCの共存相は、典型的な高温超伝導体であるLa_<2-x>Sr_xCuO_4やYBa_2Cu_3O_<6+x>では観測されていない。また電子相図の明確なn依存性は、nの増加が積層方向の磁気的相互作用の増加に対応し、AFM秩序をより安定化することを示す。これらは、CuO_2面間の磁気的結合の重要性を指摘するものであり、CuO_2面の相図の正確な理解につながる重要な結果と考えている。
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Research Products
(6 results)