2009 Fiscal Year Annual Research Report
有機肥料由来のエストロゲンの土壌中挙動と植物生長への影響の検討
Project/Area Number |
08J01005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
櫻井 伸治 Kyoto University, 原子炉実験所, 特別研究員(PD)
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Keywords | エストロゲン / 植物由来酵素 / エストロゲン消失経路 / 植物生長 / エストロゲン分解酵素 / サロゲート物質 / オートクレープ処理 / 添加回収率 |
Research Abstract |
シロツメクサ(以下、植物)によるエストロゲン分解酵素に着目したエストロゲン消失経路の解明、およびエストロゲン存在下での植物生長の変化の2点について検討した。 前者ではエストロゲン分解酵素を含む試料では対象物質(エストロゲン)のみならず、回収率補正のためのサロゲート物質も前処理操作中に分解され、エストロゲン濃度の正確な測定と実験結果の評価が困難であることが問題となった。この問題の改善策として測定直前にエストロゲン分解酵素による影響を除去させることを試みた。具体的には前処理を行う直前にオートクレーブ処理を行ってエストロゲン分解酵素を不活化してエストロゲン濃度の測定を行った。その結果、葉茎部と根部の回収率はほぼ同程度のものとなったが、全体的に回収率が20-40%低下し、オートクレーブ処理は最適ではないことが判った。原因としてオートクレーブ処理によってサンプル内の成分がサロゲート物質を妨害する成分に変質したことが考えられる。現段階では測定方法の抜本的な改善策を見出すところまでに至らなかったが、エストロゲン分解酵素に妨害されないサロゲート物質を代用として使用することを検討する必要があると示唆された。 後者では窒素枯渇条件下で生育させ、植物と土壌微生物に窒素枯渇のストレスを与えてエストロゲンの有無による植物生長差を観察した。窒素量を減らした寒天に根粒菌を植え付けた試験では、エストロゲンの有無によって試験開始4週間後の根の湿重量に差が見られた。エストロゲンがない寒天と比してエストロゲンが存在すると湿重量が大きくなり、エストロゲンが根粒菌に何らかの影響を与えて根粒菌が活性化し、植物の根の生長が促進したものと考えられた。したがってエストロゲンによる植物生長への影響はゼロではなく、土壌中の窒素が少なく根粒菌が生息するような環境下ではエストロゲンによる生長促進または抑制が生じることが考えられた。
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Research Products
(6 results)