2008 Fiscal Year Annual Research Report
ピエール・クロソウスキーの作品における演劇性の研究
Project/Area Number |
08J01051
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大森 晋輔 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ピエール・クロソウスキー / 演劇性 / 演劇的神学 / カルメロ・ベーネ / アウグスティヌス / ニーチェ / シミュラークル / スペクタクル |
Research Abstract |
本研究の目的は、20世紀の作家ピエール・クロソウスキーの作品に見られる演劇的要素を探ることで、その背後に西洋近代の思考に対する尖鋭な考察が含まれていることを示すことにある。その観点から当研究員は、近年研究が目覚しい<演劇性>の概念を援用しつつ、その作品全体のライトモチーフを突き止め、従来よりも見通しの良い視点を提示しようとしている。平成20年度は以下の研究成果が生まれた。 1.論文「ピエール・クロソウスキーの作品における演劇性の研究に関する序論:そのカルメロ・ベーネ論をめぐって」は、2008年3月16日に学習院大学で開かれた日本フランス語フランス文学会関東支部大会における発表をもとにしたもので、イタリアの俳優カルメロ・ベーネに関するクロソウスキーの比較的珍しいテクストをもとに、クロソウスキー自身の演劇現象に対する思考を探った。 2.論文「シミュラークルとスペクタクル:ピエール・クロソウスキーにおける神学と演劇」は、2007年12月6日に東京大学駒場キャンパスで開かれた「日本学術振興会LACワークショップ」での発表をもとにしたもので、クロソウスキーが古代ローマの演劇や神話を語る際に何度も言及する、アウグスティヌスによる当時の退廃的風俗(「演劇的神学」)批判のもつ問題の検討を行うことで、クロソウスキー作品に通底する演劇性の射程を明らかにした。 3.論文《A la recherche d'un equivalent:Klossowski,son Nietzsche et Roberte》は所属する専攻内紀要『言語情報科学』第7号に掲載されたもので、クロソウスキーの小説『歓待の掟』をそのニーチェ論との関連で読み解いたものである。それらの作品におけるコミュニケーション概念を分析することで、クロソウスキー作品の演劇性研究を補強する目的で行われた。 なお、研究の一環として進められていた、クロソウスキーの重要な文学・思想評論集である『かくも不吉な欲望』の翻訳(共訳)が出版された。
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Research Products
(4 results)