2009 Fiscal Year Annual Research Report
ホロノミック数論的D加群の様々なコホモロジー作用素による保存の研究
Project/Area Number |
08J01070
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 知行 The University of Tokyo, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 数論的D加群 / 特性多様体 / ホロノミー加群 / コホモロジー作用素 |
Research Abstract |
Berthelotの数論的D加群の理論においては開移入のpush-forwardに対するホロノミック性の保存が最も重要な問題の一つであり,本研究の課題の中心となる問題である.これに関してはKedlayaによるアイソクリスタルの準安定化予想の解決を機に部分的な結果がCaroなどによって得られている.しかしこの準安定化予想は非常に強い定理であり数論的D加群の理論の本来の存在目的から考えても本末転倒なところがある.また古典的な方法でのアプローチがあると仮定すれば準安定化予想を用いるのはいささか大げさである.古典的な複素数体上のD加群の類似の問題に対する証明は応用範囲が非常に広く,例えばその証明の過程でその存在が示される$b$関数は特異点の不変量と関係が深いことが知られている.私はこのような$b$関数を定義し存在を証明することによって問題に取り組んでいく必要があると考えている.今年度は古典的なアプローチで多様体が曲線のとき,ある種のアイソクリスタルについてホロノミック性が保存されていることを示した.ここで重要な点はこのアイソクリスタルには必ずしもフロベニウス構造を必要としないことである.今までの議論では準安定化予想も含めてフロベニウス構造を実質的に用いていた.そのためフロベニウス構造なしでホロノミック性をいう数少ない結果の一つといえる.(誤解なきよう付け加えるとまったく初めてというわけではない.具体的な例ならばいくつも知られていた.)証明には$p$進微分方程式の議論,特にChristol-Mebkhoutの理論を用いる.証明は微分加群のスロープ・フィルトレーションを用いて具体的に計算することで成される.そのため複雑ではあるが有限表示を(少なくとも純な場合には)具体的に与える結果でもある。
|