2008 Fiscal Year Annual Research Report
イベリア半島における異文化受容とスペイン・ロマネスク写本芸術の生成
Project/Area Number |
08J01090
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
久米 順子 Osaka University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(SPD)
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Keywords | スペイン / 初期ロマネスク美術 / 装飾写本 / モサラベ / レコンキスタ |
Research Abstract |
本年度は、10世紀後半から初期ロマネスク美術の胎動期である11世紀にかけて、イベリア半島におけるレコンキスタ(再征服運動)の舞台となった、キリスト教圏とイスラーム圏の国境地帯の修道院スクリプトリウム(写本制作所)の活動に注目した。スペインならびに米国への海外出張を行い、スペイン国立図書館、スペイン国立高等学術研究院図書館、トレド大聖堂付属図書室、コロンビア大学図書館、プリンストン大学内キリスト教美術研究所、ヒスパニック・ソサエティ・オブ・アメリカ図書室等において、中世史学・美術史学に関する文献渉猟ならびに研究対象となるイベリア半島由来の装飾写本のマイクロフィルム調査、実見調査を行った。これらの調査によって、レコンキスタの発展に伴い、写本制作に携わった写字生・挿絵師の修道院内での役割や社会的立場が、前ロマネスク時代から初期ロマネスク時代にかけて大きく変化したことが明らかになった。また、修道院において継承された古代からの知の遺産に対して、どのような装飾が施されたのかを解析した。さらに、この時期にイスラーム支配下から北部のキリスト教圏に亡命したモサラベ(イスラーム支配下のキリスト教徒)たちのイスラーム観を、国境地帯に点在する修道院スクリプトリウムで、一部はモサラベたち自身の手によって制作された、写本挿絵の図像分析を通して研究し、イスラームは写字生・挿絵師に必ずしも否定的に捉えられていたわけではなかったことを明うかにした。以上の成果は、すべて海外の学会において口頭発表され、現在公刊中である。
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Research Products
(6 results)