2009 Fiscal Year Annual Research Report
従属接続詞を用いた複文の構成とアスペクト・テンス・モダリティに関する日独対照研究
Project/Area Number |
08J01101
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高 裕輔 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 時間接続詞 / 時間節 / 複文 / ドイツ語 / コントラスト / モダリティ / アスペクト / テンス |
Research Abstract |
本年度は、ドイツ語の時間接続詞を対象とし、時間接続詞が導入する副文の解釈と副文内に共起するモダリティ要素との関係について分析を行った。対象は、時間節内に主観的モダリティを示す副詞が共起しているにもかかわらず、時間関係から意味拡張が起こっておらず、時間的解釈が保持されている次のような例である:(1)Der Gesamtvorstand des Forums Mittelrheintal beschloss einstimmig, nachdem viele Versuche zur Integration und Kooperation leider scheiterten, zur GMN-GmbH und zu Andreas Bitz auf Distanz zu gehen.このような例は、時間節の意味拡張による多義的解釈は節の意味的階層の「広さ」の階層関係で説明されるという昨年度の分析では十分に説明ができない。また、節の意味的階層の「広さ」が変わりうるnachdem, bevor節だけではなく、意味的階層がが変化しないとされるals節においても観察された。さらに、これらの例では、常に主文・副文間のコントラスト(=対比関係)が与えられている。そこで、主文に対するコントラストが副文に与えられることで、主文と同等の文ステータスを副文が獲得している、という分析をおこなった。また副文の主文ステータス取得は、副文であり計ながら何らかのSpeech actを得られることで起こっているという仮説を設定した。 本年度の成果は、従属接続詞の解釈と副文のアスペクト・テンス・モダリティとの相互関係性を明らかにするという本研究の目標に、おおきく寄与すると考えられる。それは、副文の解釈は副文内に共起する要素の有無だけでは必ずしも決定されない、つまり表面的に副文内にそれの要素が含まれている状態から、さらに解釈が行われる段階への橋渡しをする理論が必要だと言うことが明らかになったからである。本年度はこれを「Speech act仮説」として示し、その成果は日本独文学会2009年春季研究大会にて提示した。
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Research Products
(1 results)