2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J01112
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 俊文 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 溶液内反応 / 自由エネルギー / 動的電子相関 / 非平衡溶媒和 / 円錐交差 / 光化学反応 / プロトン化シッフ塩基 / 線形応答 |
Research Abstract |
光吸収などが引き金となって起こる励起状態反応は、気相・液相だけでなく生体内でも広く見られ、特に、目の網膜における光認識の初期反応や核酸塩基の光吸収後の緩和過程などのサブピコ秒スケールの反応が近年注目されている。これらの反応では異なる電子状態間が公差を起こす円錐交差点付近が重要であり、この問題に対して我々は動的電子相関を考慮することで定量的に気相中の円錐交差点を探索する方法の開発を行った。一方で、溶液内や生体内では、自由度の多さゆえポテンシャルエネルギー面で議論することは不可能であり、溶媒などの環境の自由度の統計平均をとる非平衡自由エネルギーを考慮する必要がある。 そこで我々は、動的電子相関を考慮した自由エネルギー面を定式化し、その自由エネルギー面の円錐交差探索を行う方法の開発を行った。具体的には、線形応答関係を用いて非平衡溶媒和自由エネルギーを定義し、そこにMS-CASPT2法によって動的電子相関を取り込んだ。さらに、この非平衡自由エネルギーの解析的微分を求め、これを用いて溶液内での最小自由エネルギー円錐交差点を探索する方法の開発を行った。 また、我々は本方法を用いてメタノール溶液内でのプロトン化シッフ塩基のモデル分子である(E)-penta-3,5-dieniminium cation(PSB3)の光cis-trans異性化反応を調べた。その結果、C=C結合およびC=N結合の回転によって引き起こされる最小エネルギー円錐交差点の構造およびエネルギーが動的電子相関および溶媒和の影響を受けること、またそこに至るまでの反応経路を調べる上でもこれらの影響が重要であることを発見した。 本研究は、溶液内での光化学反応における動的電子相関の影響を初めて明らかにしたものである。また本手法は溶液内反応のみを扱ってきたが、生体内反応などへの拡張も容易であり、今後そういった方面での発展も期待される。
|
Research Products
(3 results)