2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J01115
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牧 藍子 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 俳諧 / ぬけ |
Research Abstract |
談林俳諧「ぬけ」の技法について、発句と連句の両面から研究をすすめた。その成果を以下、二つに分けて示す。 1、発句の「ぬけ」については、東京大学附属図書館の俳諧コレクションにおける、元禄以前の作法書・俳論書の網羅的な調査をふまえて、談林俳諧における表現技巧としての「ぬけ」を考察した。この調査から、談林の「ぬけ」は、ぬかれた語を補うことで一句がうまく解釈可能となる点に関心の向いた手法であり、表現面においては、敢えて一句の調和を崩す斬新な表現をとるという特徴を持つことが明らかとなった。また、和歌以来の伝統に対する談林俳諧のあり方が、貞門俳諧よりずっと自由であったことも、上記の研究を通じて確認された。以上の研究成果は「発句の「ぬけ」」の論文として発表した。 2、連句の「ぬけ」については、主として貞門・談林間の俳諧論争に関わる資料を用いて、談林俳諧において積極的に評価された「ぬけ」の句と、連歌以来非難の対象とされてきた「ぬけがら」の句との相違を明確にした。また談林の「ぬけ」が、貞門連句における詞の制約から逃れ、詞付に基づきつつ、そこから一歩を踏みだした付合手法であることも確認された。また連句の「ぬけ」の資料調査の成果としては、天理大学附属天理図書館綿屋文庫に所蔵された『追善註千句』という資料が注目に値する。これは、蕉門俳人である許六が、芭蕉の追善のために詠んだ独吟千句に自ら注を付したもので、その中に「ぬけ」の用語が用いられている。この資料から、談林の「ぬけ」は、一句における表現技法としてはあくまで一時的な流行にとどまる技巧であるが、連句の展開上は元禄疎句と通じる傾向が認められるという見通しに裏づけが得られた。
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Research Products
(3 results)