Research Abstract |
哺乳類に約千種類存在する7回膜貫通G蛋白質共役型受容体(GPCR)は,特異的なリガンドによる刺激を受け取ることで,細胞内へシグナルを伝達する。GPCRのパルミトイル化は受容体の細胞膜発現や,シグナル伝達活性,脱感作過程などを制御することが知られているが,GPCRのパルミトイル化を担う酵素は未だ不明である。近年,DHHCシステインリッチドメインをもつ蛋白質(DHHC蛋白質)がパルミトイルトランスフェラーゼ(PAT)であることが明らかとなってきたことから,本研究ではDHHC蛋白質によるGPCRへのPAT活性の解析,GPCRの機能制御機構解明を目的とした。 前年度では,酵母DHHC遺伝子欠損株の解析から,酵母に発現させたヒトDHHC蛋白質が正常に機能し,PAT活性を持つことを明らかにしたが,ヒトDHHC蛋白質による特定の基質へのパルミトイル化の検出まで進展していなかった。そこで本年度ではまず,GPCRと類似したパルミトイル化パターンをもつ酵母蛋白質Agp1に対するヒトDHHC蛋白質のPAT活性を解析した。その結果,酵母DHHC遺伝子akr1, erf2の二重欠損株ではAgp1のパルミトイル化が消失していたが,この株にDHHC-2,-3,-7,-15,-20,-21を導入した株ではAgp1のパルミトイル化が野生株と同程度起こり,DHHC-5,-6,-8,-10,-14,-18を導入した株ではパルミトイル化が中程度起こることを見出した。また,シナプス後膜においてシグナル因子集積の足場蛋白質として機能するPSD-95は,DHHC-2,-3,-7,-15によりパルミトイル化されることが報告されているが,本研究における酵母を用いた系においても同様のPAT活性が確認できたことから,酵母を用いた系のヒトDHHC蛋白質の機能解明への有用性が示された。このアッセイ系を用い,GPCRのPATの同定及びGPCRに対するDHHC蛋白質の基質特異性の解明を今後も継続していきたいと考えている。
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