2008 Fiscal Year Annual Research Report
好熱及び好冷菌酵素を題材とした蛋白質の揺らぎと機能に関する理論的研究
Project/Area Number |
08J01123
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小杉 貴洋 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 酵素 / 揺らぎ / 化学反応 / 温度依存性 / 分子動力学法 / QM / MM法 / α-Amylase |
Research Abstract |
本年度は、研究計画に従い低温活性のAlteromonas haloplanctis α-Amylase(AHA)及び常温活性のPig pancreatic α-Amylase(PPA)に対して基質結合に伴う蛋白質の揺らぎの変化と既存のQM/MM法による酵素内化学反応のエネルギー計算を行った。また、蛋白質の揺らぎを取り入れた酵素内化学反応の計算を行うために既存のQM/MM法を改良したプログラムの開発をした。蛋白質の揺らぎについては、AHA及びPPAにおける蛋白質の揺らぎの違いを定性的に見積もるためMDを行いRoot Mean Square Fluctuation(RMSF)を計算し、AHAとPPAを比較した。次に、基質結合に伴う蛋白質の揺らぎの変化と自由エネルギー変化の温度依存性を見積もるためにQuasiharmonic Approximationにより基質結合時と基質非結合時のエントロピー変化を計算し比較した。その際、これまで蛋白質全体に対してのみ行われていたQuasiharmonic Approximationをアミノ酸残基ごとに分割する方法を考案し、基質結合時のエントロピー変化についてより分子論的な視点から調べた。すると、PPAでは基質結合とともに活性サイト周辺のアミノ酸残基のエントロピーが大きく低下するのに対し、AHAではそれほど大きな違いは見られなかった。この結果は、PPAでは蛋白質が基質をより強く捕まえていることを示していると考えられる。酵素内化学反応の計算では、AHAおよびPPAに対して既存のQM/MMにより化学反応における反応経路に沿ったポテンシャルエネルギーの計算を行った。AHAもPPAもともにα-1,4グルコシド結合の解離と水の付加の二段階の加水分解反応により起こると考えられているが、α-1,4グルコシド結合の解離の際のポテンシャルエネルギーの障壁はそれほど大きくなさそうであることがわかった。
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Research Products
(3 results)