2008 Fiscal Year Annual Research Report
放散虫群集解析に基づいた中期中新世以降の西部太平洋暖水塊の形成と発達過程の解明
Project/Area Number |
08J01155
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上栗 伸一 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中期中新世 / 西赤道太平洋暖水塊 / パナマ西方沖 / 深海底堆積物 / 赤道湧昇帯 / 放散虫化石 / インドネシア海峡 / パナマ海峡 |
Research Abstract |
本研究の目的は、中期中新世以降における西赤道太平洋暖水塊の成立過程を復元し、熱帯-亜熱帯循環の変遷と亜寒帯循環の変遷との相互関係を解明することである。 今年度前半はODPによって掘削されたパナマ西方沖の深海底堆積物の試料分析を行った。現在、この地点は赤道湧昇帯の直下に位置している。コア試料の堆積物は主に石灰質軟泥からなり、保存のよい放散虫化石が含まれていた。放散虫の検鏡用も試料として320層準から層厚1cmで採取した。試料を乾燥させ計量したのち、過酸化水素と塩酸で堆積物に含まれる有機物および炭酸塩を除去し、開口60ミクロンのステンレス篩を用いて水洗した。得られた残渣を50℃で乾燥させたのち、プレパラートに封入した。今年度後半は、放散虫の検鏡・群集カウントをおこなった。放散虫の群集構造を復元するために種数、種多様度、均衡度、種の相対頻度を計算した。放散虫化石層序を確立し、群集解析から古海洋環境を復元した。その結果、1000万年、400万年前に大きな海洋環境の変化が起こっていることがわかった。1000万年前に赤道反流が発達し、東赤道太平洋に暖水塊が形成された。この時期はインドネシア海峡が上昇した時期に一致するため、海峡の上昇が赤道反流を強化させた可能性がある。400万年前になると現在の東赤道太平洋の環境が形成された。つまり赤道反流が衰退し湧昇帯が発達したため生物生産が増加した。この変化はパナマ海峡が上昇した時期に一致するため、この海峡変化によってシルの水深が浅くなり、現代型海洋環境が形成されたと考えられる。生物生産の増加は大気中の二酸化炭素の減少につながり、世界的な寒冷化を導いた可能性がある。
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