2009 Fiscal Year Annual Research Report
放散虫群集解析に基づいた中期中新世以降の西部太平洋暖水塊の形成と発達過程の解明
Project/Area Number |
08J01155
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上栗 伸一 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中期中新世 / 始新世 / 熱帯-亜熱帯循環 / 放散虫群集解析 / 絶滅事件 / 北大西洋海流 / 太平洋 / 大西洋 |
Research Abstract |
私は中期中新世以降における西太平洋暖水塊の成立過程を復元し,熱帯-亜熱帯循環の変遷と亜寒帯循環の変遷との相互関係を明らかにした.次のステップとして,さらに時代を遡り中期始新世以降の熱帯-亜熱帯循環を復元し,その原因を解明することを目指している.特に始新世に関しては太平洋と大西洋の両大洋の熱帯-亜熱帯循環を復元し,その発達史の違いを明らかにしたい. まず大西洋の中期~後期始新世の海洋循環を復元するため,大西洋低~中緯度のODP1052地点で掘削されたコア試料を用いて放散虫群集解析を行った.その結果,主に以下の3つのことが明らかになった. 1)堆積物にはおよそ150種の放散虫化石が含まれており,3つの放散虫化石帯(RP16~RP18帯)を設定することができた.RP16/RP17境界付近に24種の絶滅,RP17/RP18境界付近に9種の絶滅が認められた.したがって中期/後期始新世境界付近に段階的な放散虫の絶滅事件が起きたことが明らかになった. 2)産出した放散虫群集は典型的な熱帯種を欠くため,亜熱帯群集であることが分かった.このことから中期~後期始新世(4000万年前~3500万年前)の間,掘削地点は亜熱帯環境であったことが推測される.これは当時の海洋環境(特に海水温)が現在と類似した環境であったことを示す. 3)中期/後期始新世境界付近(3650万年前~3800万年前)に,著しい放散虫群集変化が認められた.すなわち熱帯-亜熱帯群集の産出頻度が減少し,汎世界種が増加した.この群集変化から,この期間に北大西洋海流/表層水の衰退および寒冷水/中層水の発達があったことが推測される.これらの時期は汎世界的に寒冷化し陸上の動植物の絶滅事件が起きた時期と一致する.そのため中期/後期始新世境界付近の海洋環境の変化は,汎世界的な寒冷化が原因であると考えられる.
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Scientific report for Cruise CK09―03 Expedition 904.2009
Author(s)
Nomaki, H., Takahashi, K., Kamikuri, S., Koyanagi, M., Masui, N., Mochizuki, S., Tomiyama, N.
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Journal Title
D/V Chikyu JAMSTEC Expedition Science Report 09-03
Pages: 1-40