2010 Fiscal Year Annual Research Report
放散虫群集解析に基づいた中期中新世以降の西部太平洋暖水塊の形成と発達過程の解明
Project/Area Number |
08J01155
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上栗 伸一 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 東部太平洋 / 西部大西洋 / 放散虫 / 層序 / 海洋環境 / 絶滅事件 |
Research Abstract |
本研究ではODP(IDOP)によって掘削された東部太平洋(1331地点)および西部大西洋(1051地点)の深海底堆積物を対象にして,古海洋環境を復元した. (1)放散虫化石層序の確立 これまで報告された低緯度海域における古第三紀の放散虫化石層序(Sanfilippo and Nigrini,1998)の時間解像度は200万年である、年代決定精度が低い.そこで放散虫の新たに80の基準面を発現することができた.本研究で用いる2本の深海底コアは古地磁気層序が設定されているため,時間解像度の高い放散虫化石層序を確立することができる. (2)温度躍層および表層水温の変遷 単位重量あたりの放散虫個体数,種数,多様度指数および均衡度を計算し,その変遷図を作成した.Casey (1990)による深度分布の研究を基に,産出した放散虫化石を表層種(0~200 m),中層種(200~1000 m),深層種(1000 m以深)の3つのグループに分けた.表層種に対する中層種の割合の変化によって,温度躍層の変遷を復元することができた.中期/後期始新世境界に西部大西洋で海水温の低下が起こったことを明らかにした. (3)生物生産性の変遷 放散虫の個体数の変化に基づいて,海洋表層の生物生産性の変遷を復元するこができ,中期/後期始新世境界で生物生産が増加したことが明らかになった. (4)考察 中期/後期始新世境界にメキシコ湾流が大きく南下し西部大西洋で海水温の低下が起こった.この海洋環境の変化は北アメリカ東部およびヨーロッパ西部に著しい気候の寒冷化を導いて,陸上動植物の絶滅事件を引き起こした可能性がある.
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Research Products
(4 results)