2008 Fiscal Year Annual Research Report
日本の大都市圏における移住者コミュニティの文化・社会地理学的研究
Project/Area Number |
08J01173
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
中西 雄二 Kwansei Gakuin University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 同郷団体 / 奄美出身者 / 境界地 / コミュニティ / 都市移住 / 社会地理学 / 文化地理学 |
Research Abstract |
本研究は日本「本土」在住奄美出身者のコミュニティやネットワークを具体的な研究対象として、日本の境界地(borderlands)出身者が都市移住の過程で如何なる他者化や社会的排除を受け、コミュニティやアイデンティティの様相が変容したのかを解明することを目的として進めてきた。2008年度は同郷団体活動の参与観察や奄美出身者への聞き取り調査、そして資料調査で得られた成果をもとに、人文地理学会都市圏研究部会(学会発表(1))と人文地理学会大会(学会発表(2))において研究発表を行なった。 前者の学会発表(1)では第2次世界大戦後の神戸における奄美出身者の同郷団体活動の変容過程から、研究対象の集住傾向が薄れ、同郷団体活動の政治的要素の希薄化と「奄美」を表象する象徴的文化活動の顕在化という傾向が明らかにされた。同時に、かつて否定的に捉えられることのあった「沖縄」イメージの流用も、同郷、団体活動のなかに顕著に見出された。後者の学会発表(2)では、集住地区を神戸に形成する沖永良部島出身者の岡山県倉敷市への再移住過程を明らかにした。この事例は特定企業に特化した就業状況の結果、該当企業の人員配置転換の影響を直接的に受けた研究対象の移住地移動に関するもので、原初的紐帯と社会的紐帯の二項対立的図式では説明できない奄美出身者コミュニティの様相が示された。また、再移住に伴う地域を越えた同郷者ネットワークの存在や形成過程も明らかにされた。 以上の成果は、いずれも奄美出身者の都市移住に関わる内的要因(就業状況や親族ネットワーク等)と外的要因(特定企業のリクルートや移住地の都市化過程等)の複雑な様相を如実に示すものであり、同郷団体の文化活動にみられる両義的な奄美出身者のアイデンティティの変容過程とともに、取り巻く諸要因の関係性の中で構築されていく境界地出身者コミュニティの動的な過程として明示された。
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Research Products
(2 results)