2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J01175
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Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
佐金 武 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 時間論 / 現在主義 / 時間の非対称性 / 決定論 / 因果 |
Research Abstract |
「時間とは何か」という問題は、古くて新しい哲学的難問の一つである。分析哲学における時間論の基礎を築いたマクタガートは、変化の次元としての時間という考えを提起しながらも、このような時間概念は維持することができないと考えた。本研究の目的は、このマクタガートの議論に対してダイナミックな時間論を擁護し、その可能性を見定めることにある。 この目的のもと、本年度はダイナミックな時間論の体系的展開に取り組んだ。より具体的には、現在だけが存在すると主張する現在主義の諸形態を検討し、そのうち「時制化された性質の理論」を取り上げた。そして、これを理論的な基礎として、時間の非対称性(過去と未来の概念的及び存在論的相違)の問題を論じた。 本研究プログラムにしたがえば、変化の次元としての時間が(単に現象的な見かけではなく)しっかりとした実在性をもつというためには、「開かれた未来」が「現在」を経由して「固定化された過去」になるというような変化が何らかの仕方で有意味に理解されるのでなければならない。ここで容易に見て取れるように、このような変化には過去と未来の非対称性が前提されている。そこで本年度の研究は、先に述べた現在主義の立場に基づき、この時間の非対称性の概念的明晰化に務めた。 時間の非対称性の問題は、決定論や因果をめぐる諸問題とも深く関係している。このうち、決定論の問題については、「宿命論」に関する旧来の哲学的議論に対し、本研究がもう一つの新しいアプローチを切り開く可能性のあることを示唆した。また、因果の問題に関しても、時制化された性質の理論が他の分析にはない大きなメリットをもつことを論じた。このように、本年度の研究は、研究プログラムそのものにとっても、その他の派生的な諸問題を考察する上でも有意義であった。
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Research Products
(7 results)