2008 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類における雄のみによる生殖の可能性〜精巣内卵細胞が拓く新しい生殖生物学〜
Project/Area Number |
08J01195
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大塚 沙織 Hokkaido University, 大学院・獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | MRL / MpJ / 精巣内卵細胞 / 減数分裂 / 卵細胞形成 / AKR / Sry / CAGリピート / 性分化 |
Research Abstract |
哺乳類の胎子期における生殖細胞の性分化は雌では減数分裂に移行することによって、雄では有糸分裂のG0/G1期に停止することによって起こり、その結果、雌では卵のみが、雄では精子のみが産生される。しかし、生後間もないMRL/MpJマウスの精巣内において卵細胞が産生されることを発見した。これまでの研究から、精巣内卵細胞は卵巣内卵細胞と類似した形態学的特徴を有し、生後0〜30日まで観察され、その出現頻度のピークは生後14日目に認められることがわかっている。 今年度は、まず胎子期の精巣に着目し、減数分裂マーカーであるSYCP3及びDMC1と卵細胞形成マーカーであるNOBOXとFiglaの検出を試みた結果、減数分裂マーカーは胎齢13.5日から、卵細胞形成マーカーも胎齢14.5日から認められた。このことから、精巣内卵細胞は始原生殖細胞から派生し、卵巣内卵細胞と同様の過程を経て形成されることが明らかになった。 さらに、精巣内卵細胞出現の要因の究明を行った。MRL/MpJ-+/+、MRL/MpJ-lpr/lpr、C57BL/6、BALB/c、C3H/He、DBA/2、A/J、AKR/Nの近交系マウスと、MRLマウスとC57BL/6の間のF1であるB6MRLF1とMRLB6F1の精巣を検索した。その結果、精巣内卵細胞は2系統のMRLマウスに加えてAKR/NとB6MRLF1にも検出された。F1での解析から、精巣内卵細胞出現の責任遺伝子の1つがY染色体上にあることが明らかになった。Y染色体上の性決定因子であるSryに注目し、近交系マウス間でその遺伝子配列を比較した結果、MRLマウスとAKR/Nに共通してSryのCAGリピートの一部短縮が見られた。また、F1及びAKRにおける精巣内卵細胞の出現頻度はMRLのものと比べると低く、常染色体上にも責任遺伝子の存在が示唆された。
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Research Products
(3 results)