2009 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類における雄のみによる生殖の可能性~精巣内卵細胞が拓く新しい生殖生物学~
Project/Area Number |
08J01195
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大塚 沙織 Hokkaido University, 大学院・獣医学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | MRL / MpJ / 精巣内卵細胞 / 性決定 / 性分化 / 減数分裂 / Y染色体 / 精子受容能 / 性転換 |
Research Abstract |
MRL/MpJ (MRL)マウスとC57BL/6 (B6)マウスの間で作製したF1の解析から、精巣内卵細胞出現の責任遺伝子は複数存在し、少なくともその内の1つはY染色体上にあることがわかっている。MRLマウスに出現する精巣内卵細胞の出現要因の解析行うため、バッククロス系の作出と観察を行った。具体的に、Y染色体のみがMRLマウスに由来するコンソミックマウス、B6-Y^<MRL>をB6マウスとの間に作出する過程において得られたN2からN8まで、精巣内卵細胞の出現を検証し、精巣内卵細胞は少なくともN8まで出現することを確認した。このことから、精巣内卵細胞はMRLタイプのY染色体のみで出現することが可能であることが推測された。しかし、バッククロス系の精巣内卵細胞出現率は低下していたことから、出現頻度に関する遺伝子は他の染色体上にあると考えられた。 精巣内卵細胞は卵巣内卵細胞と類似した形態学的特徴を有し、胎子期に始原生殖細胞から減数分裂・卵細胞形成過程を経て形成されることがわかっている。精巣内卵細胞の配偶子としての機能を卵巣内卵細胞のものと比較・検証するため、精巣内卵細胞の性染色体組成と精子受容能を検証した。生後8日齢の個体から得られた卵巣、および精巣内卵細胞を用いて、FISH法にて性染色体の検出を行ったところ、卵巣内卵細胞はX染色体のみを、精巣内卵細胞はX、Y双方の性染色体を有することが明らかになった。このことから、精巣内卵細胞は性染色体組成がXYの始原生殖細胞から派生し、生後8日齢の時点で、第一減数分裂を終えていないことが示された。また、Sperm-egg fusion assayを用いて生後12日齢の精巣内卵細胞の精子受容能を検証したところ、精子の侵入像が確認された。このことは、精巣内卵細胞は精子に卵細胞と認識され、精子との膜融合に必要な因子を有していることを示している。
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Research Products
(3 results)