2008 Fiscal Year Annual Research Report
社会的地位選好とマクロ経済動学-所得分配、人口、および経済成長の分析への応用-
Project/Area Number |
08J01235
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川元 康一 Kyoto University, 経済研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 社会的地位選好 / 内生的経済成長理論 / 人的資本 / 人口成長 |
Research Abstract |
(1)人的資本保有量に基づく社会的地位選好が存在する2部門内生的経済成長モデルを構築し、課税政策の経済成長に対する効果を分析した。結果、労働所得に対する課税が経済成長を促進する効果を持つことが示された。これは、労働所得に対する課税によって、個人の人的資本蓄積に関する意思決定において、教育の便益である社会的地位の重要度が教育の費用(賃金の損失)に対して相対的に大きくなる、ということに起因している。従来の既存研究では、課税が経済成長を促進するのは均衡経路に不決定性が発生している場合が殆どであったのに対し、本研究では均衡経路が一意に定まる(決定的である)状況で課税政策が経済成長を促進しうる可能性を提示したことになる。 (2)将来世代に対する利他性を持つ個人によって構成される内生的出生率のモデルを用いて、人的資本保有量に基づく社会的地位選好が出生率に与える影響を分析した。家計の選好における社会的地位に対する重要度が高まると、親は子供の数を制限しながら一人当たりの教育支出を多くしようとする。すなわち、地位願望が強い経済ほど、均衡で達成される出生率が低くなるということが明らかになった。 既存の内生的出生率のモデルは政策的に人口成長率を調整しようとすることに効率性の上での意義を見いだせないものが殆どであるのに対し、本研究のモデルは、出産に関する意思決定に外部性(社会的地位選好)を含むモデルである。従って均衡資源配分の効率性の分析や、最適な人口政策の分析に応用することが期待される。
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Research Products
(1 results)