2009 Fiscal Year Annual Research Report
社会的地位選好とマクロ経済動学-所得分配、人口、および経済成長の分析への応用-
Project/Area Number |
08J01235
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川元 康一 Kyoto University, 経済研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 社会的地位選好 / 人口成長 / 出生補助政策 |
Research Abstract |
相対所得への関心(社会的地位選好)が存在する、内生的出生率・世代重複モデルの構築を行った。モデルでは家計の地位願望が強くなるほど家計は労働供給を増加させ、出生率は低下する。地位願望の存在により、家計の労働供給行動は負の外部効果を持つことになる。すなわち、通常め想定としては、地位願望の影響を打ち消し、出生率を上昇させるような政策(出生への補助金)が経済厚生を改善することが予想される。この点に関して、定常状態の厚生(各家計の効用)について以下の結果が得られた。1.利子率が人口成長率を上回るものの、その程度が比較的小さい均衡が達成される(もしくは子供を持つことへの選好が強い)経済においては、地位願望が一定以上の強度を持っていれば、出生への補助金は定常状態の厚生を改善するが、定常状態の厚生を最大化する補助金率は地位願望の影響を打ち消す補助金率より小さい。また、地位願望の強度がある一定水準未満であれば、出生補助金の導入は定常状態の厚生を悪化させてしまう。2.利子率が人口成長率を上回る程度が大きい均衡が達成される(もしくは子供を持つことへの選好が弱い)経済においては、地位願望の強度がいくら大きくても、出生補助金は定常状態の厚生を必ず悪化させる。 定常状態の厚生を悪化させるケースでは、出生補助政策の導入はパレート効率性の意味においても厚生を改善できないことになる。以上の結果は、家計が相対所得へ関心を持つことは出生率促進政策が正当化されるための十分条件とはならず、出生補助金の導入には慎重な検討が必要とされるということを示唆している。
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