2008 Fiscal Year Annual Research Report
種子制限が草本群集構造に与える影響のマルチスケール播種実験による検証
Project/Area Number |
08J01348
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
饗庭 正寛 Hokkaido University, 北方生物圏フィールド科学センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 群集生態学 / 林床草本 / 種子制限 |
Research Abstract |
研究開始以前に設置、播種を済ませてあった実験区における発芽実生の確認、タギングを行った。また、それらの実験区の環境条件(林冠木の樹種構成、各種微地形、光環境、土壌水分、夏期バイオマス、リター量)の測定を行った。その結果、以下のような成果が得られた。連続的な環境における多地点での播種実験は実施例が少なく、これらの結果は、植物群集の空間パターンに関する研究において重要な進歩といえる。 1、発芽のみられなかったオオウバユリ以外の全ての種において、播種処理により実生の出現数ならびに実生の出現する地点数が増加した。これらの結果は、少なくともこれらの林床草本の実生の出現に関して種子散布制限と量的種子制限の2つのメカニズムが共に重要であることを示している。 2、択伐や植林などの人為攪乱後の地点における播種の効果には顕著な種間差がみられた。この結果は、人為攪乱後に成立した森林に生育できない林床草本には、環境の継続的な変化の影響を受ける種と散布制限により再定着できない種の2つのタイプが存在することを示している。 3、環境条件は対照区の実生数の8-28%を説明した。播種区においては実生数の15-31%が説明され、播種処理により説明率の上昇する種、低下する種、変化のみられない種という3つの異なる応答が観察された。この結果は、一部の種では種子制限により利用できていない生息適地がある一方で、別の種では播種処理が人工的なマス効果をもたらしている可能性を示唆している。
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