2009 Fiscal Year Annual Research Report
種子制限が草本群集構造に与える影響のマルチスケール播種実験による検証
Project/Area Number |
08J01348
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
饗庭 正寛 Hokkaido University, 北方生物圏フィールド科学センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 群集生態 / 林床総本 / 種子制限 / ニッチ / 生物多様性 |
Research Abstract |
林床草本群集の形成における種子制限の効果を検証するために行っている播種実験において、発芽した実生の追跡調査を引き続き行った。前年度、発芽が確認できなかったオオウバユリの種子も多数発芽し、実験対象の7種すべての解析が可能になった。また、各実験区の土壌成分の分析を行い、植物の分布の決定要因として潜在的に重要なpH、硝酸イオン、リン、カルシウム、マグネシウム、カリウム、腐植の各含有率を得た。加えて、実験区周辺の植生調査を行い、これまでに測定した環境条件と実験区の位置情報を用いて、林床草本の群集構造ならびに個体群構造の決定要因としての環境と空間的距離の相対的重要性を検証した。以下では、この研究の成果について報告する。 群集レベルの解析においては、環境要因独自の寄与が5.6%、空間要因独自の寄与ならびに両者の相関による寄与はどちらも0%であった。一方、個体群レベルの解析においては、環境要因の寄与率が0-21.4(平均6.6)%であったのに対し、空間要因の寄与率は0-21.1(平均4.6)%であり、いくつかの種においては環境要因よりも重要な決定要因であった。とりわけ24種中2種においては、説明された分散のすべてが空間要因によるものであった。この結果は、植物群集を構成する個々の種において空間分布の決定機構が著しく異なることを示した初めての結果であり、植物群集の形成メカニズムの解明につながるだけでなく、希少植物も多い亜寒帯林の林床草本群集を保全する上でも重要である。
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Research Products
(1 results)