2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J01439
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
葉山 大地 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 冗談 / 友人関係 / 関係スキーマ / 他者理解感 / 被受容感 |
Research Abstract |
本研究は,「聞き手を笑わせようという話し手の親和的意図が聞き手に伝わらず,冗談に対して聞き手が怒りを感じたり,不快さを感じる」という現象である冗談の不達を取り上げ,冗談の不達を生起させる話し手の要因として以下の2点を検討した。第1点目として,「聞き手に親和的意図が伝わる」という話し手の期待を取り上げ,その期待が形成されるプロセスを検討した(研究1)。大学生248名を対象とした調査を行った結果,相手の外見や容姿に関する冗談や性的冗談を言った際に親和的意図が聞き手に伝わるという期待は,「冗談が失敗しても相手の友人は笑って許してくれる」という被受容感や,「相手の友人は冗談の好みが分っている」という他者理解感を背景にしていることが明らかとなった。第2点目として,友人同士(37組74名)をペアにした実験により,他者理解感や被受容感の正確性を検討した(研究2)。実験の具体的な手続きは,実験参加者に冗談が3つ書かれたカードを呈示し,3つの冗談の中でもっとも面白いと感じた冗談をひとつ選択してもらい,併せて相手の友人が面白いと選択した冗談も回答するというものであった(全12試行)。実験の結果,他者理解感や被受容感は,相手の友人が面白いと選択する冗談を正しく当てられるという正答数と関連が無いことが明らかとなった。本研究の試みは,従来のユーモア研究において,ほとんど取り上げられることの無かった冗談のネガティブな側面を扱っているという点で重要性が高いと考えられる。特に、本研究は,攻撃性や敵意といったパーソナリティ特性に関する変数ではなく,他者理解感や被受容感といった友人との関係性という観点からアプローチしたという点で,学術的意義があるといえる。
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