Research Abstract |
本研究では,巨視的な構造レベルから微視的な細胞レベルに至る骨の力学的階層構造に着目し,マルチスケールな観点から骨リモデリング現象のメカニズム解明を目指している.前年度は,骨の階層構造のうち,海綿骨の微視構造要素である骨梁スケールに着目し,そのリモデリング過程について検討した.本年度は,まず,前年度中に得られた研究成果を学術論文としてまとめた.さらに,これまでに構築した骨梁リモデリングの数理モデルに基づき,海綿骨スケールにおける骨の適応的形態変化に関して,計算力学的アプローチによる検討を行った.以下に,本年度中の主な研究実施内容と,得られた成果をまとめる. 1.多孔質弾性体内部における流体圧応答の理論的検討 繰返しの単軸荷重と曲げモーメントが複合して作用する二次元多孔質弾性体について,内部流体圧に関する理論解を導出した. 2.異方性を有する骨梁透水係数テンソルの推定手法の提案 間質液の流路である骨小腔-骨細管系の形態異方性を考慮した骨梁透水係数の推定手法を提案し,これを骨梁断面の二次元蛍光画像に適用することにより,骨細管形態の異方性,および,骨梁透水係数テンソルを定量的に評価した. 3.骨梁リモデリングの数理モデルの構築 巨視的な骨形態変化と微視的な細胞活動との力学的階層間を貫く骨梁リモデリングの数理モデルを提案し,これに基づき,単軸繰返し荷重を受ける単体骨梁の形態変化を調べた.その結果,荷重軸に対して斜めを向いた骨梁は,リモデリングにより荷重軸方向に配向した. 4.リモデリングによる海綿骨の適応的形態変化に関する検討 複雑な位相構造を有する立方体海綿骨片を対象として,上記数理モデルに基づく骨梁リモデリングシミュレーションを行い,海綿骨内の骨梁の形態変化について検討した.その結果,荷重軸方向に平行な骨梁で選択的に骨形成が引き起こされ,海綿骨を構成する骨梁は荷重軸方向に配向した.
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