Research Abstract |
本年度は室温でクラスター中心に位置的に乱れたCd4面体を有するTsai正20面体クラスターがbcc配列をとる一連の化合物Cd_6M(M=Y, Pr, Nd, Sm, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Lu)について、透過型電子顕微鏡および電気抵抗率測定により相転移の有無および相転移後の低温相の構造を調べた。その結果、Cd_6M(M=Y, Pr, Nd, Sm, Gd, Tb)において低温で超格子反射の生成を観察し、低温で相転移を起こすことがわかった。また、Cd_6M(M=Ca, Y, Nd, Sm, Gd, Tb)の低温相は√<2a>×a×√<2a>の単位胞のC底心単射晶(空間群C2/c)であることが判明した。一方、Cd_6M(M=Dy, Ho, Er, Tm, Lu)では超格子反射の生成は見られず、電気抵抗率測定などでも15K以上の低温で異常は観測されなかった。以上より、Cd_6Mにおいて、M=Y~Tbでは規則-不規則相転移を起こし、M=Dy~Luでは相転移が起こらないことが判明した。このことより、正20面体クラスターを構成する希土類元素と本相転移の関係として、(1)希土類元素の原子半径がNdからTbまでは低温相は同じ構造(空間群C2/c)を有すること、(2)原子半径がDy以下のときは、相転移が全く起こらないことが明らかになった。以上の結果より、本相転移が一定の普遍性を有すること、また、正20面体クラスター内の空隙のサイズが小さい場合、4面体の規則化が阻害されることが判明した。
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