2008 Fiscal Year Annual Research Report
イネ適応性に関わる出穂性複合遺伝子座の遺伝学的解明
Project/Area Number |
08J01545
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上床 修弘 Hokkaido University, 大学院・農学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | イネ / 量的形質 / メンデル因子 / 開花期・出穂期 / エピスタシス / 自然変異 / 地域適応 / FT-like遺伝子 |
Research Abstract |
栽培および野生イネの複数系統に分布するse-pat複合遺伝子座の遺伝的基盤を解明し、その適応的意義を理解するため、当該年度は以下の項目について研究を実施した。 1.se-pat複合遺伝子座が示す自然出穂変異の遺伝的基盤の解明 インド型品種Patpaku由来se-patを構成する連鎖した3つの遺伝子座(se-pat-a、se-pat-b、se-pat-c)のうち、微動因子であるse-pat-bおよびse-pat-cを232kbおよび442kbの染色体領域にそれぞれ同定した。これら染色体領域には、既知の出穂性遺伝子であるHd3aおよびHd3bがそれぞれ座位した。se-patと同座であるが効果の異なるアジア野生イネW593由来en-Selを同様に遺伝的解剖した結果、en-Selはen-Sel-a(57kb)とen-Sel-b(236kb)に分割された。en-Sel-aおよびen-Sel-bには既知遺伝子としてRFT1およびHd3aがそれぞれ座乗した。これらの結果は、連鎖した各因子の効果がPatpakuとW593の間で遺伝的に分化していることを意味し、出穂性遺伝子の自然変異をもたらす原因を理解する上で重要な示唆を与える。 2.既知遺伝子とse-pat遺伝子の遺伝学的ネットワークの構築 古典的に同定された出穂性遺伝子Ef1およびm-Ef1とse-patの遺伝学的関係を調査するため、3遺伝子座が分離する集団の各個体について遺伝子型を決定し、自然日長(43°N)で到穂日数を評価した。分離集団を用いた遺伝解析の結果より、Ef1遺伝子によりse-patの効果が消去されることが明らかとなった。このような表現型レベルに基づいた遺伝学的関係の構築は、分子的知見と統合してイネ出穂遺伝機構を理解する上で重要な意味を持つ。
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