2008 Fiscal Year Annual Research Report
動的速度論的制御を基盤とするビアリール化合物の触媒的アトロプ不斉合成反応
Project/Area Number |
08J01556
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
芦沢 朋子 Keio University, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アトロプ不斉開環反応 / ビアリールラクトン類 / 動的速度論的光学分割 / コバルト錯体触媒 / 水素化ホウ素ナトリウム / 銀錯体触媒 / トリイソブチルアミン |
Research Abstract |
ビアリールラクトン類の動的速度論的光学分割を伴う立体選択的開環反応は、軸不斉ビアリール類の合成法として有効な手法である。すなわち、ビアリールラクトン類の2つの芳香環は、ほぼ同一平面に存在するため、M体およびP体のビアリールラクトン類の異性化障壁は小さく、両者の平衡は非常に速いと考えられる。このとき、どちらか一方の軸不斉異性体を認識する適切な求核剤により、ラクトン開環反応が起これは、開環後は軸不斉に関する異性化障壁が増大するため、両エナンチオマー間の異性化は起こらず、軸不斉ビアリール類が得られる。本研究では、触媒量の光学活性ケトイミナトコバルト錯体と修飾水素化ホウ素ナトリウムを作用させると、ビアリールラクトン類の動的速度論的光学分割を伴うアトロプ不斉還元反応が進行することを見いだした。HPLC分析により、M体およびP体のビアリールラクトン類の速い異性化平衡を維持しうる温度条件を確認した上で反応を行ったところ、様々なビアリールラクトン類の動的速度論的光学分割が円滑に進行し、高エナンチオ選択的に対応する軸不斉ビアリールジオール類が得られた。さらに、光学活性なルイス酸触媒によって活性化されたラクトンカルボニルに対し、アルコールが求核攻撃するエナンチオ選択的ラクトン開環反応を設計し、より一般性に優れた軸不斉ビアリール類合成法の開発に着手した。その結果、光学活性な銀-ホスフィン錯体触媒存在下、ビアリールラクトン類に対して求核剤としてメタノールを作用させると、ビアリールラクトン類の動的速度論的光学分割を伴うアトロプ不斉開環反応が進行し、軸不斉ビアリールエステル類が高エナンチオ選択的に得られることを見いだした。この反応では、ビアリールラクトン類の種類によってはトリイソブチルアミンの添加が反応性の向上に効果的であり、様々な軸不斉ビアリールエステル類が高収率かつ高エナンチオ選択的に得られた。
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