2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J01572
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
柴田 幹大 Kanazawa University, 自然科学研究科, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 生物物理 / ナノバイオ / 生体分子 / タンパク質 / 原子間力顕微鏡 / イメージング / 膜タンパク質 / プロトンポンプ |
Research Abstract |
本研究は高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を光駆動プロトンポンプタンパク質であるバクテリオロドプシン(bR)に適用し、bRが光を受けて機能を発現する際の構造変化を直接可視化し、どのような構造変化を起こすのかを明らかにすることが目的である。 1.野生型bRの光反応サイクルは約10msであり、高速AFMでも、その構造変化を明瞭に捉えることは難しい。そこで、光反応サイクルが野生型に比べて1000倍程度遅いD96NbR変異体を用いた。1 frame/secの高速AFM観察の結果、細胞質表面で光照射によって各bR分子が3量体の中心から外側に開く構造変化が明瞭に観察された。この構造変化は光を切った後、数秒で元の状態に戻り、光に応答して繰り返し観察される高い再現性を示した。その一方で、細胞外表面は光照射による顕著な構造変化は観察されなかった。7本のα-ヘリックス(A~G)の原子モデルと比較すると、高速AFMで観察された構造変化はE-Fループの変位と考えられる。bRの光反応サイクルはpHに依存し、アルカリ環境下では光反応サイクルが長くなることが知られている。そこで、pH7,8,9で高速AFM観察を行い励起状態(構造変化している状態)の寿命を比較した。その結果、分光測定の結果と同様にpHに依存して励起寿命が長くなった。この結果は、高速AFMで観察された構造変化が探針・試料間接触によるアーティファクトでないことを示しており、真にbRの機能(光駆動プロトンポンプ)と関係した構造変化であると結論できる。 2.励起する光の強度を変えることで、反応するbRの分子数をコントロールした。その結果、周りのbR分子の状態によって、励起寿命が変化する協同性を示すことが分かった。この協同性は、3量体内の分予間で起こるのではなく、隣り合う3量体に属するbR分子間で起こる。興味深いことに、この協同性は、全bR分子の挙動を平均化した解析では打ち消されるが、個々のbR分子の振る舞いを高速AFMで詳細に解析することで分かってきた新事実である。
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Research Products
(8 results)