2009 Fiscal Year Annual Research Report
不登校生徒における学校を経由した進路形成とその諸課題
Project/Area Number |
08J01573
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 秀樹 The University of Tokyo, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 不登校 / 後期中等教育 / 進路形成 |
Research Abstract |
今年度は、以下の3つの分析課題に取り組んだ。 第一に、不登校経験者計に登校継続・学校適応をもたらす要因について、ある高等専修学校を事例として、昨年度に継続して検討を行った。今年度は、中学校時代に無気力傾向や非行傾向があった、いわば「脱落型不登校」であった者たちに焦点をあてて、分析を試みた。その結果、「脱落型不登校」であった生徒たちの教師不信は、教師に求めるものがあるがゆえの感情であり、それゆえに徹底的な教師の関わりによって教師不信は改善可能であり、学校適応へと導くことが可能であることが見出せた。しかし、そのためには教師の質・量を支えるための行政からの支援が必要であることも課題として挙げられた。 なお、小・中学校における「脱落型不登校」の学校適応について、近年多くの自治体で導入されることとなったスクールソーシャルワーカーに新たに注目した。その結果、スクールソーシャルワーカーの実践は不登校支援への有効性をもつが、文部科学省の政策展開の問題でその導入に地域間格差が生じうる危険性があることが見出せた。 第二に、不登校経験者の後期中等教育の学校を経由した進路展望の形成について、昨年度に見出した専門性と進路展望の非連結が、事例とする高等専修学校において継続的に見られるということがわかった。しかし同時に、事例とした学校では今年度は就職希望者の比率が例年より高く、景気変動によって進路希望が大きく変動しうることも確認された。 第三に、後期中等教育の学校を卒業した不登校経験者の社会適応過程に関して、事例とした高等専修学校の卒業生へのインタビューからは、学校で形成された教師との親密な関係と、それに基づくサポートや、「痛み」を共有するという共通点からなる友人関係が次の進路では調達できないために、不適応が生じるということが見出せた。 第一の成果は学会発表、第三の成果は学会誌への投稿論文として発表を行った。
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Research Products
(5 results)