2009 Fiscal Year Annual Research Report
系の全自由エネルギーに基づいた高分子からみあい系のモデリング
Project/Area Number |
08J01595
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堀尾 和史 Kyoto University, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高分子ダイナミクス / レオロジー / 誘電緩和 / 流動場解析 |
Research Abstract |
平成21年度は,平成20年度で構築した高分子からみあい系の理論モデルのより詳細な検討を行った.また,理論構築と平行して,高分子溶液に対して流動下における誘電緩和測定を行い,流動下における高分子ダイナミクスも検討した.詳細は以下に記述する.定常せん断流動下もしくは大変形下での高分子ダイナミクスは未だよく理解されていない.渡辺らは,シアシニングを示すせん断速度領域の定常せん断流動下でポリイソプレン(PI)溶液のせん断勾配方向の誘電応答を測定し,誘電緩和がせん断によって加速されないことを報告している.大振幅せん断(LAOS)下における流動誘電測定についても近年報告はあるが,測定と解析が共に十分であるとは言えない.一方,からみあった高分子メルトもしくは溶液について,高速せん断流動やLAOS下ではせん断勾配方向に対してシアバンドや滑りなどの流動場の不均一性が起こる可能性が報告されている.誘電応答はせん断勾配方向に対して測定しているため,誘電測定の流動条件下で流動不均一性の検討することは大変重要である.本研究では,定常せん断流動下もしくはLAOS下でからみあったPI溶液の誘電緩和を測定した.また同じ流動条件下で,微小粒子を分散させたPI溶液をマイクロスコープで観察し,流動場の均一性を検討した.流動場観察の結果,定常流動下のシアシニング領域もしくはLAOS下でも均一流動場が確認された.流動誘電測定の結果,LAOS下では変形周波数と同期して振動する電流の緩和成分が観察された.誘電緩和時間と誘電強度はせん断様式によらず平衡状態とほぼ同じ値となり,せん断勾配方向に測定される誘電緩和の流動に対する鈍感性が確認された.この現象は既存の理論,シミュレーションモデルでは説明できず,からみあいの生成消滅を考慮した高分子ダイナミクスを再検討する必要があるものと思われる.
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Research Products
(9 results)