Research Abstract |
「研究目的」これまで,筋サイズと筋力の関係は数多く報告されてきたものの,筋力が収縮時の変数であるにもかかわらず,筋サイズはいずれも安静時に測定されてきた.肘関節屈筋群のような平行筋の場合,収縮に伴い筋横断面積が増加することが示唆される.そこで,収縮時の筋横断面積と筋力との関係を検討することを研究目的とした.両者の関係を明らかにすることは,骨格筋の生理学的特性やヒトの身体運動の原理に関する理解を深めるうえで重要である. 「研究方法」筋体積は収縮により変化しないことが報告されているので,肘関節屈筋群を対象に筋体積・関節トルク関係および筋横断面積・筋張力関係の差異を検証することにより,安静時の筋横断面積を採用することの問題点を確認した.収縮時の筋横断面積は,最大随意収縮(MVC)時には超音波法および巻尺により推定し,最大下随意収縮時にはMRI法により測定し,筋力との関係を検討した. 「研究成果」筋サイズ・筋力関係を検討する際に,筋横断面積ではなく筋体積を採用すべきであることが明らかにされた.このことは,安静時の筋横断面積が筋力を評価する指標として適切ではなく,収縮時の筋横断面積を測定することが重要であることを示唆するものであった.MVC時の筋横断面積は,超音波法により得られた筋厚と巻尺により得られた体肢周径囲,両者の積を用いて評価できることが示され,この指標と筋力との関係を検討した.その結果,MVC時の筋横断面積指標は安静時のそれよりも筋力と密接な関係があることが明らかにされた.また,MRI法を用いて最大下随意収縮時の筋横断面積を測定し,筋力との関係を検討した結果,収縮時の筋横断面積と筋力との間の相関係数は,安静時のそれよりも有意に高い値であった.以上のことから,ヒトの力発揮特性を検討する上で,収縮時の筋横断面積を測定することが不可欠であるといえよう.
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