2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J01674
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
土井 智義 Osaka University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 沖縄 / 領土性 / 集団就職 / 非琉球人 |
Research Abstract |
1972年5月15日の「日本復帰」、すなわち米軍占領下にあった沖縄の施政権が日本へと返還された「施政権返還」という出来事は、沖縄社会に何を刻印したのか。ポスト「復帰」とも呼ばれる現在において、米軍や自衛隊の基地問題をはじめ、開発や貧困といった沖縄社会が抱える問題は、「施政権返還期」から何も変わってはいないのは明らかである。ところが、このような沖縄の苦い状況についての言論を眺めてみると、昨今の主流な言説では、日本国家の部分であることを前提にしつつ相互承認的なアイデンティティ・ポリティクスに絡め取られた格差是正を求める対案主義が横行し、議論の立て方が大きく後退しているように見える。一方、「施政権返還期」に登場した言論のうち、その良質なものにおいては、ある共通平面の部分(領土性)には回収されえない<沖縄>なるものを思考し、それを機軸とした<自律>の思想が展開されていた。今年度に集中的に取り組んだのは、そうした<沖縄>を見出した思考の痕跡に充ちたものとして岡本恵徳の文章を読むことであった。 また、「施政権返還期」の思想を立体的に読み込むために、いくつかの事実確認的な作業も並行して行なった。その一つは、当時「高度経済成長」にあった「本土」に低賃金労働力として大量に吸収されていった沖縄からの若年労働力の問題、すなわち「集団就職」に関してである。もう一つは、当時の対抗的思想においても見落とされていた沖縄籍を持たず、諸権利を剥奪されていた「非琉球人」に注目し、八重山の台湾人などの調査を行なった。この両者とも現在の沖縄を考える上で重要な問題であることが確認できた。
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Research Products
(4 results)