2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J01674
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
土井 智義 Osaka University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 沖縄 / 施政権返還 / 「非琉球人」 / 「同化」 / 在沖奄美出身者 |
Research Abstract |
米軍統治下から継続して現在の沖縄社会に深く浸透する諸問題(基地問題、戦争の傷痕、アイデンティティなど)を考えるにあたっては、沖縄の施政権が米軍から日本に返還された1972年5月15日の「施政権返還/日本復帰」という出来事をどのようにとらえるのか、という課題を避けることができない。 「施政権返還」とは、端的に述べると、アメリカの軍事的覇権をより効率的に維持するため、沖縄住民の反占領運動としての「復帰運動」を横領した上で「施政権」を日本に明け渡し、沖縄を米日で共同管理する事態に他ならないが、抑圧状況が変わらぬことを察知した沖縄の知識人の多くは、近代以降の沖縄と日本国家との関係性を再考することで<抵抗>を試みた。現在、そうしたラディカルな思想は「反復帰論」と総称され、その「同化」批判的側面、すなわち近代以降の「沖縄人」が「日本人」に言語などの指標において「同化」しようとしたことを批判する点が評価されている。こうした「同化」批判を賞賛することで、沖縄・「本土」を問わず、現在の「沖縄住民」を「民族的」主体として固着させることに収斂する議論が大きな趨勢を占めている。しかし、いわゆる「反復帰論」全体を「同化」批判に還元したのでは、拙稿で取り上げた岡本恵徳のような「共同性」をあくまでも「構成的な過程」において捉えようとする繊細な思考は顧みられることがない。「施政権返還期」の沖縄思想をより深く理解するためにも、あらためて岡本恵徳の思想を再論した。また「同化」批判が広く受容される背景には、「日本国民」に包摂された「沖縄住民」を均質なものと見なし、「復帰」前の沖縄で米国民政府布令によって市民権を奪われていた琉球籍以外の住民(「非琉球人」)の存在の忘却があるだろう。この忘却ゆえに、占領者が被占領者を「領土化された人口」(バリバール)として纏め上げることで統治を円滑化する戦略への批判が抑圧されるのである。少なくとも米軍統治時代から現在の沖縄社会までを、持続する占領状態として考察するためには、米軍統治下の「外国人登録」の実態を確認し、それが「施政権返還」によってどのように再編されたのかを考察しなければならない。そのために米軍地統治下の「非琉球人」の歴史を、鹿児島県立奄美図書館などで資料収集しつつ、在沖奄美出身者の処遇を中心に調査し、沖縄の「施政権返還」が現在の沖縄社会に与える規定力を立体的に考察した。
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Research Products
(4 results)