2010 Fiscal Year Annual Research Report
シロアリの社会行動をもたらす神経改変の分子機構とその進化
Project/Area Number |
08J01687
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石川 由希 北海道大学, 大学院・環境科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 攻撃性 / オクトパミン / チラミン / DUMニューロン / 社会性昆虫 / 兵隊 / 防衛 |
Research Abstract |
シロアリは高度に発達した社会を形成する真社会性昆虫の代表的なグループである。大部分のシロアリ種にはコロニー防衛に特化した兵隊カーストが存在する。彼らはワーカーとほぼ同じ遺伝的背景を持つにも関わらず、非常に高い攻撃性を示す。本研究ではその高い攻撃性をもたらす分子・神経学的メカニズムの解明を目的とする。 研究代表者は、兵隊の攻撃性を司る候補因子としてオクトパミンと、その前駆体チラミンに注目した。本研究課題(1年目)におけるHPLCを用いた解析により、兵隊の脳や食道下神経節に含有されるチラミンがワーカーよりも有意に多いことが明らかになった。また、本研究課題(2年目)ではシロアリの攻撃性の計測するための行動解析系の立ち上げを行った。そこで本年度はその行動解析系を用い、オクトパミンやチラミンの機能解析を行った。すると、チラミンの人工投与によってワーカーの攻撃性は有意に高くなるが、オクトパミンにはそのような効果は見られなかった。このことから、兵隊シロアリにおける高い攻撃性は、オクトパミンではなく、チラミンによってもたらされていることが強く示唆された。また、抗チラミン抗体を用いた免疫染色により、シロアリの脳・食道下神経節のチラミン免疫反応性ニューロン(チラミンを含有していると予想されるニューロン)の分布や投射部位を観察した。その結果、DUMニューロンや、OA/TA5,7,8と名付けられたニューロンの細胞体が兵隊特異的に肥大していることが明らかになった。これらのニューロンの肥大化が兵隊の高い攻撃性や防衛行動に関与していると示唆される。
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Research Products
(7 results)