2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J01695
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石川 麻乃 北海道大学, 大学院・環境科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 表現型多型 / 翅多型 / 繁殖多型 / 幼若ホルモン / アブラムシ |
Research Abstract |
本年度は、多くの昆虫において発生制御に関わる幼若ホルモン(Juvenile hormone : JH)に注目し、アブラムシ翅多型における役割について解析した。まず、母虫の体内で生じる翅型運命決定における役割に注目した。LC-MSによって高/低密度処理下の母虫の体内JH濃度を計測したところ、密度処理間で有意な差はなかった。JH分泌阻害剤も子虫の翅型に影響を与えなかったことから、JHは翅型運命決定に関わらないと考えられた。次に、子虫の後胚発生過程で起こる有翅/無翅型の分化過程の制御におけるJHの役割について解析した。LC-MSによって3~5齢の有翅/無翅型でJH濃度を計測したところ、3齢の無翅型でJH濃度が有意に高かった。また3齢の有翅型にJHを塗布すると、飛翔器官形成が阻害されたことから、JHは有翅/無翅型の後胚発生で、飛翔器官の発達制御に関わると示唆された。 アブラムシは、生活史の中で有翅型/無翅型を切り替える翅多型だけでなく、単為生殖と有性生殖を切り替える繁殖多型も示す。そこで、この繁殖多型におけるJHの役割についても解析を行った。材料にはゲノムプロジェクトが完了したエンドウヒゲナガアブラムシAcyrthosiphon pisumを用いた。アブラムシでは、短日条件により単為生殖から有性生殖への切り替えが誘導される。長日/短日条件下で育った母虫の体内JH濃度をLC-MSで解析すると、短日条件の母虫でJH濃度が顕著に低かった。また、短日条件下の母虫にJHを塗布し、人為的にJH濃度を上昇させると雄の産出が遅れた。以上から日長条件による繁殖様式の切り替えはJHにより制御されると示された。次に、JH濃度の制御機構を知るため、JHシグナルに関わる遺伝子群をゲノムデータベースから同定し、長/短日条件下での発現をqRT-PCRで解析した。すると、JH分解酵素をコードするJHEやJHEHが短日条件で高く発現した。従って、短日条件によって上昇したJH分解酵素遺伝子の発現によりJH濃度が低下し、有性生殖が誘導される可能性が示唆された。
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Research Products
(5 results)