2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J01695
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石川 麻乃 Hokkaido University, 大学院・環境科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 表現型多型 / 翅多型 / アブラムシ / セロトニン |
Research Abstract |
昨年度挙げた翅型運命決定に関わるいくつかの候補因子の機能を推測するためには、母虫から子虫に対して密度情報がどのように渡されているのかを観察し、密度情報が受け渡しされるタイミングでこれらの因子の挙動を解析する必要がある。そこで、96-well microtiter plateを用いた有翅型誘導系を確立し、母虫に対して様々な時間の高密度処理を行うことで、密度情報がいつ、どのように胚に伝達され、どこで不連続な有翅/無翅シグナルに変換されるのか、また胚に密度情報を伝えるシステムはどのような性質を持つのかを明らかにしようと試みた。その結果、1)密度刺激は胚発生最終期のクチクラ形成期まで感受されること、2)10分という短い高密度刺激でも産まれる子虫が有翅型に切り替わること、3)母虫が受ける高密度処理時間に応じて、母虫が有翅型を産出する期間が長くなることが示された。このことから、母虫内には密度情報を反映するシグナル物質が存在すること、その物質は(1)母虫の受けた密度刺激に応じて即座に生成され(2)ある程度の期間体内で維持された後、徐々に消失し、(3)クチクラ形成期の胚に感受されることが示唆された。 では、胚に密度を伝えるシグナル物質とは一体何だろうか。私は昨年度に挙げられた候補遺伝子の他に神経調節物質として知られるセロトニンにも注目した。HPLC-ECDを用い、microtiter plateによる高/低密度処理を行った母虫の頭部セロトニンレベルを計測すると、高密度処理によりセロトニンレベルが上昇していた。しかし、芽から離した直後の個体と比較すると、低密度処理でもセロトニンレベルが上昇する傾向にあった。また、1.5時間と6時間の高密度処理間では、セロトニンレベルは変わらなかった。この結果から、セロトニンは直接"密度シグナル物質として"翅型運命決定に関与している可能性は低いが、密度や飢餓などのストレスに応答して放出され、密度シグナル産出の上流に関与しているのではないかと考えられた。
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Research Products
(5 results)