Research Abstract |
船舶/海洋構造物等の溶接構造物で発生する損傷の多くは,疲労が直接的又は間接的な原因であると言われており,疲労寿命を定量的に推定し,疲労損傷を未然に防止することは極めて重要である。溶接構造物に生じる疲労き裂は初期には表面・埋没き裂であるため,定量的な寿命予測のためには,表面・埋没き裂の寿命予測精度の向上が必要である。表面・埋没き裂の高精度寿命予測の観点に立てば,1.複数表面き裂の形状変化予測法の確立,2.単一表面・埋没き裂の形状変化予測法の確立,3.表面・埋没き裂のき裂成長シミュレーション手法の開発,の三つの課題を解決する必要がある。 課題1に関しては,溶接継手として十字継手を採用し,溶接止端部から発生する複数表面き裂の成長を計測した。この結果は,所属研究室のデータベースとして蓄積されたが,溶接継手で発生する表面き裂の成長は非常に複雑であるため,今後も種々の溶接継手に対する計測が必要である。 課題2に関しては,応力拡大係数をパラメータとする形状変化予測法を提案し,種々の実験データとの比較・検討を行い,実用上十分な精度で単一表面き裂の形状変化を予測できることを確認した。 課題3に関しては,表面・埋没き裂のき裂開口変位(COD)の推定手法の一つであるSlice Synthesis Methodology(SSM)を利用し,表面・埋没き裂のき裂成長シミュレーションアルゴリズムの構築を行った。SSMは,表面・埋没き裂を板厚貫通き裂の集合体として評価する手法である。アルゴリズム構築のためには,弾塑性状態のCODを求める必要がある。本研究では,弾性状態に適用が限られていたSSMを弾塑性状態に拡張し,き裂結合力モデルと拡張したSSMとを用いることで,通常では計算が困難な表面・埋没き裂のCODの計算を可能とし,表面・埋没き裂のき裂成長シミュレーションアルゴリズムを構築した。
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