2010 Fiscal Year Annual Research Report
生物間相互作用ネットワークからみた「捕食ー被食関係」に関する研究
Project/Area Number |
08J01735
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
長 泰行 千葉大学, 大学院・園芸学研究科, 助教
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Keywords | 捕食-被食関係 / 捕食回避行動 / 揮発性物質 / 生物群集 / 誘導抵抗性 / 競争 / ナミハダニ / チリカプリダニ |
Research Abstract |
生物間相互作用において、捕食者と被食者の役割は常に一定ではない。すなわち、発育段階の途中で両者のサイズが重なるとき、大きな被食者は小さな捕食者を捕食することが起こりうる。本年度は、自然界では同所的に存在する3種の捕食性カブリダニ(便宜上、デジェネランスカブリダニ、ククメリスカブリダニ、スワルスキーカブリダニをそれぞれ捕食者A、B、Cと呼ぶ)を用い、幼虫期に捕食者を経験することによって、成虫になって他種幼虫に対してどのような捕食行動を示すのかについて研究を行った。ここで重要な点は、お互いに幼虫時には他種成虫は捕食者となるが、いったん成虫に達したら他種の存在は全く脅威とはならない、ということである。 捕食者Aを卵から捕食者B成虫の存在下で飼育し、成虫になった個体を捕食経験個体として実験に用いた。対照区は、捕食者の不在下で飼育した個体を用いた。捕食を経験した捕食者Aに捕食者BまたはCの幼虫を与え、それらに対する捕食率を対照区と比較したところ、経験したBの幼虫に対しては捕食を増加させるのに対し、経験したことのないCの幼虫に対しては対照区と比べ捕食率は変化しなかった。これらの結果は、(1)捕食者Aが幼虫期の経験を成虫時にまで引き継ぐこと、(2)経験した成虫と、その後与えられた幼虫の違いを認識する能力を有すること、を示唆するもので、捕食-被食関係において記憶、学習、認識といった能力が重要な役割を果たすことを示すものである。本結果は、すでに論文作成を済ませ現在国際誌に投稿中である。
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Research Products
(4 results)