2009 Fiscal Year Annual Research Report
大気大循環モデルと観測データを用いた火星大気の力学と物質循環の研究
Project/Area Number |
08J01761
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
黒田 剛史 Japan Aerospace Exploration Agency, 宇宙科学研究本部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 惑星大気 / 火星 / 大気力学 / 物質循環 / サブミリ波サウンダ / 惑星探査 / 国際研究者交流 / ドイツ:スウェーデン |
Research Abstract |
火星大気の力学・物質循環およびそれらの将来観測計画について、論文投稿と学会発表を精力的に行った。力学関連では、北半球の冬至前後に全球規模のダストストームが起こる際の極夜の昇温について、火星大気大循環モデルを用いて過去の観測事実を再現し、そのメカニズムを調べた。その結果、ダストによる南半球の強い非断熱加熱により励起されるプラネタリー波・熱潮汐波・より小さいスケールの波(重力波および水平渦)がほぼ同程度の割合でその昇温に寄与していることが示された。特に小さなスケールの波の火星大気における効果は本研究によって初めて示され、地球と火星における大気波動の効果を比較する上で重要な手がかりとなった。また地上サブミリ波(周波数数百GHz~数THzの波長域の電波)望遠鏡による風速の直接観測の結果と火星大気大循環モデルで得られる数値計算の結果とを比較したところ、大気大循環モデルの放射コードに応じて風速の絶対値や日変化について異なる再現性が得られた。この火星大気大循環モデルは水や二酸化炭素などの物質循環の再現実験にも用いられ、定性的な季節変化はこれまでの観測データを再現する結果が得られている。現在NASAやJAXAで検討中のサブミリ波サウンダを用いた火星周回船上からの大気観測計画では、水蒸気をはじめとする大気微量物質の3次元分布の導出とその連続的時間変動の観測、さらに地上サブミリ波望遠鏡でなされているよりも詳細な風速の直接観測が予定されており、この火星大気大循環モデルはそのデータ同化のための道具として期待されている。サブミリ波観測チームと協力して、火星の大気力学と物質循環に迫り、惑星大気力学の確立や火星気候変動の様々な謎を解き明かしていくことを目指している。
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Research Products
(16 results)