2008 Fiscal Year Annual Research Report
複雑化学反応系の規則性・非統計性と強レーザー場による新しい反応制御
Project/Area Number |
08J01764
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
河合 信之輔 Hokkaido University, 特別研究員PD
|
Keywords | 反応動力学 / 凝縮相 / 自由度の削減 / 熱ゆらぎ / 非線形性 / 化学反応の制御 / 時間依存標準形 / 偶然と必然 |
Research Abstract |
生体系を含む多くの現実的な系では、膨大な数の原子が現象に関与し、物理的洞察を得る上で大きな妨げとなる。このような多自由度の系で現象に本質的な少数の自由度を取出す可能性を探るのが本研究の目的である。本年度は自由度の削減の方法の一つとしてランジュバン方程式に着目し、熱ゆらぎ環境下の化学反応の動力学理論を構築し、反応に対する非線形性と熱ゆらぎの効果を議論する枠組の構築を行った。 熱浴と非線形性の効果を取込んだ座標変換により、他の自由度と独立に振舞う反応座標の構築に成功し、この符号のみで反応の運命が決定されることがわかった。この新しい反応座標が0になる場所は反応の運命を分かつ境界となり、溶媒の熱ゆらぎと非線形性が存在する系でも「反応の境界」が存在することが示された。 座標変換を与える式の解析的な形から、凝縮相化学反応の仕組を熱浴からの外力および非線形の効果の観点から理解する枠組が構成できた。これは頑健に発現する生体機能などの熱的にゆらぐ環境下でも化学反応の原理の解明に道を開くものと期待される。また、同様に時間依存の外力にさらされた系であるレーザー場中の反応に対しても、同じ枠組が適用できる。 数値シミュレーションによって得られた反応確率を初期条件の関数としてプロットすると、初期条件の値によって反応性に差があることがわかった。即ち、熱ゆらぎ下でも反応の結果は全くランダムではなく初期条件の記憶をある程度残している。上で構築した反応座標(の熱平均)がゼロになる集合を反応確率のプロットに重ねて描くと、確かに反応確率の高い領域と低い領域の境界と非常に良く一致していた。すなわち本研究で構築した手法により反応性の高い領域と低い領域の境界を解析的な形で求めることが可能となり、レーザー励起等の手法を用いて反応の起こりやすい初期条件を選択することで化学反応を制御することにつながっていくものと期待される。
|
Research Products
(7 results)